赤色受・別館
□七回たたいて
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「ごちそうさまー!じゃ、お会計はよろしくね!なるほど君?」
「わ…わかったよ真宵ちゃん…うう…」
「あ!今日はトノサマンの放送日だよ。先帰るね!なるほど君も早く帰っておいでよ。」
「うん。証拠品の資料を整頓したら、帰るよ。」
裁判所内にある喫茶店。
慌ただしく真宵ちゃんが出ていく。
やれやれ、とため息をつき誰かに聞かせるようなやや大きめの声で成歩堂が独り言をもらす。
「さてと…僕もお手洗いに行ってからもうひと仕事するかな。」
会計をする為、入り口に向かう成歩堂。
ひとり静かに紅茶を飲んでいる赤いスーツの男とすれ違う。
裁判所内のお手洗い。
夕暮れ時だからだろうか?人影もまばらで閑散とした廊下。
中でも入り口から一番遠いこのお手洗いは人影すら見当たらない。
そんなお手洗いに青いスーツを身にまとった男が近づく。
迷うことなくお手洗いの一番奥の個室前に立つ。
コンコン
コンコン
中から返事がある。
男はもう一度戸を叩く。
コンコンコンコンコンコンコン
七回連続で叩いた男。
口は真一文字に閉じ、両手はズボンのポケットに突っ込んだまま足を少し開き戸をしっかりと見据える。
……カチャ…キィィ………
戸はゆっくりと内に開き、中にはフタを閉じた状態の洋式便器に座る赤いスーツの男。
股を閉じ、両手を膝の上に置き眉間にシワを寄せ悩ましげな表情で相手の出方を待つ。
そんな姿を見て真一文字に閉じていた口を緩ませ中に入る男。
個室の鍵を後ろ向きのまま慣れた感じでかけながら座る男に笑顔で。
「今日もよろしくね。御剣。」