蓮ノ種
□『ユウくんのアヒル』
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「・・・・・・。」
困った。
今までで、こんなに困ったことはないかもしれない。
目の前に浮かぶ、黄色い塊。
赤い帽子とくちばし。
キョトンと見つめてくる、瞳。
こいつは―――
『ユウくんのアヒル』
こんなことになる前。
俺は長期任務から帰ってきて、溜まった垢やら疲れやらを落とそうと思い、浴場に向かった。
今は深夜だから、浴場は貸し切り状態。
疲れていて、あまり元から人が苦手な俺にはうってつけの条件だ。
少し機嫌も良くなって、戸を開ける。
先に体を洗い、髪をまとめて上にあげ、湯に入る用意をしたまではよかったんだ。
だけど―――
「・・・・・・。」
ぷかーん
なんでこんなものが教団の大浴場にいるのかがわからない。
湯船に浮かんで、優雅にとは言えないが泳いでいる。
世間一般に言う、『アヒル船長』
そいつが一羽、入っていた。
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