絆の華

□宴会
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紗羅は少し考え事をしながら廊下を渡り、

居間の隣に備えてある台所に入った。



「・・・隊長?どうかしたんですか!?」



楓は紗羅が台所に入って来たことに気付くと

その様子を悩み事があるとでもと勘違いしたのか、

途中だった皿洗いを中止して手の水気を拭くと慌てて駆け寄ってくる。



「ああ・・・・・久しく夕飯でも作ろうと思ってな。

今、献立を少し考えていたところだ。」



「本当ですかっ!!!?」



紗羅が曖昧な口調でそう言った途端に

楓は嬉しそうに詰め寄ってきて、期待に瞳を輝かせる。



紗羅の料理は基本が和風中心で

その腕前は世辞を無しで美味しいものだと

隊員たちには評判なのだ。



「・・・・・やはり迷惑、だろうか。」



「そんな訳ないじゃないですかっ!!!!

この朗報を早く皆にも伝えてきますね!!」



紗羅が少し困ったような複雑な表情で聞くと、

楓は期待を込めた目で嬉しそうに笑ってから、

すぐに走って台所を出て行ってしまった。



「朗報とは・・・・・大袈裟だな。」



紗羅は独りになった台所で虚しく呟くと

今朝、白斗が総隊長から受け取ったであろう

袋の中身を確認する。



「・・・山ジイめ。私が公表を許可することを

分かっていて、この品を入れたな。」



紗羅は呆れたように溜め息をついてから

一瞬だけ少し嬉しそうに優しく微笑む。



袋の中には鮮やかな色で彩られた、

一週間も保たないような高級な生の海鮮物が

だいたい二食の分量で詰まっていた。



「・・・・・・調味量は足りるかな。」



紗羅はもう一度だけ食材を確認してから

独り言を呟いて、苦笑いを浮かべると

大きくて赤々と輝く鯛を氷袋から取り出した。




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