Gift2

□【夢小説】たからもの。
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『沙良』






生まれてきてから、幾度となく呼ばれてきた私の名前。


『沙良』


たくさんの、数えきれない人達に呼ばれてきた名前。


きっと、一番多く呼んでくれたのは両親だろう。


『沙良』


そう呼ばれるのが、あまりに当たり前すぎて。


その事の大切さなんて全く気付けないでいたけれど。



あなたに出逢って…気付いたの。



「沙良?」


「えっ?あ、ごめん…なあに?」



久しぶりに2人で過ごした甘い夜…

その余韻に浸りながら、ぼーっとしていた私の顔を覗き込むようにして、櫂が首を傾げた。


「どしたの、ぼんやりしちゃって」


「な、なんでもない…」


櫂の事考えてたなんて、恥ずかしくて言えないよ…


「沙良」


ふわり、と彼の瞳が細められて。

眩しそうに私を見つめながら名前を呼ばれて、きゅんと胸の奥が悲鳴をあげた。


「な、に…?」


どうにか言葉を返すと、櫂はクスッと笑いながら私の頬を突っついた。


「呼んでみただけ」


「も、なにそれっ」


軽く頬を膨らませる私の機嫌を取るように、彼は名前を呼び続ける。


「沙良?」


どうしてだろう…


「沙良ちゃーん?」

どうして、こんなに…


「沙良」


ほらね、こうやってあなたに名前を呼ばれると、どうしようもなく胸が苦しくなるんだよ?


なんでもない筈の私の名前が、何故かとても素敵な言葉のように聞こえるんだよ?


まるで魔法がかかったみたいに、キラキラと輝いて…この世の中にたった1つしかない宝物みたいに思えてくるの。

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