乙女の世界

□終末の先を見つめる愚者ども
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この血塗られた世界に来てどれくらいたっただろう。


現在私は帽子屋ファミリーに滞在している。
"帽子屋"と聞けば聞こえはいいが、けして帽子を作っているわけではない。

帽子屋ファミリーとは、銃やナイフを使って人を殺める危険な仕事をしている、いわゆるマフィアというものだ。


その筆頭であるブラッド=デュプレに、私はとても愚かしい想いを抱いているに気づいてしまった。

マフィアの、しかもトップにそんな感情を抱くなんて常識外れにも程があるだろう。
そして彼に会いたいがために、自分から彼の部屋に訪れて本を借りようとしている自分自身にひどく驚いた。

(ハァ...ほんとにどうしてあんな奴のことが好きになってしまったのかしら.....)

そんなことを思っていると、突然後ろから誰かに抱きしめられた。

振り返えらなくても分かるその人物は、心地よい薔薇の香りを漂わせながら、程好く筋肉が付いた逞しい腕を私の身体に回してガッチリと固定している。


「何してるのよ、ブラッド...」


「おや、声を掛けなくても誰だか分かるなんて随分成長したじゃないか。」
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