小説
□記憶
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今日は沙都子がいつもよりも早起きをして私と……梨花を起こしていた。
羽入曰わく、最近元気がない圭一の為にとっておきのトラップを作ってやると張り切っているみたいだ。
それにしても元気がない人にトラップって……まあ、そこが沙都子らしいところでもあるのだけど。
「梨花〜月花〜いつまで寝ぼけてらっしゃいますの、早く支度してくださいまし」
「みぃ、沙都子がいつにもまして早起きなのですよ」
「そ、そんなことないですわよ。梨花の気のせいですわ」
沙都子は焦って否定していたので少しからかってやることにする。
「よっぽど圭一にトラップを仕掛けるのが楽しみなようね」
私がそう言うと沙都子は耳まで赤くして言った。
「そ、そんなことないですわ」
本当にわかりやすい子ね……だけど沙都子のそんな所が私は好きなのよ。
かつて私がこの世界で傍観していたとき、魅音とレナと圭一が死んで沙都子がどれだけ悲しんでいたか私は知っている。
沙都子のためにも……みんなのためにも私は圭一の目を覚ますわ……もちろん仲間の手を借りながら。