★★★

□甘える方法
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最近、朝から不機嫌になる
理由は簡単だ










「千鶴!」

平助と一緒に手を繋ぎながら登校する千鶴
幼馴染みだからと仲が良すぎだろう
あいつ、危機感とかないのか…

「おはようございます、斎藤先輩」
「あぁ、おはよう」

なんて顔に出せるわけもなく俺は風紀委員の仕事をする
本当は千鶴は俺のだといいたいのに…

「なにか浮かない顔してますけど…」
「――平気だ」

心配した千鶴が不安そうに俺を見る
だけどそっけない話し方しか出来ない

「あのよ、あんまりツンツンしてると千鶴に愛想尽かされるぜ、一君」

平助がニヤリとしながら話す
まるでそうなればいいかのような話し方だ

「そんなことないですよ」

にこっりと笑う千鶴
その笑顔が平助も見たいんだろうと思う
そう思うとなんだか嫌な自分を発見してしまいそうだ

「千鶴、放課後、理科準備室に来てくれ」
「なんだよ、一君、放課後の理科準備室ってやらしーなぁ」
「そんなことするためじゃない」

ただ隣で笑っていて欲しいだけだ
やろうとしても南雲や総司が邪魔するんだろうな
その前に千鶴の心の準備が出来るまでするつもりはないが…










――放課後

南雲は用事があるのか今日は帰ると言ってきた
珍しいこともあるものだと思う

「斎藤先輩、手伝いましょうか?」
「いや、これは俺たち風紀委員だから平気だ」

相変わらずな態度に笑みが零れる
そんなことする必要なんてないんだ

「今日、千鶴を呼び出したのはただ単に傍にいたいと思ったからだ」
「それだけですか…」
「あぁ、駄目だろうか…」

千鶴の右手を握り、俺は引き寄せる
ほんのり頬が赤く染まった千鶴は首を横に振りながら…

「そんなことありません」
「なら良かった」

自分の顔を見せたくなくて千鶴の手を引き抱きしめる
愛しくてしょうがないのは千鶴だからだ

「千鶴…」
「斎藤先輩」

お互いの名前を呼び千鶴にキスをする
ほんの一瞬の口づけから唇を離したら潤んだ千鶴の瞳
可愛いと素直に思えてしまう

「あんまり平助と手を繋ぐな」
「……それって……」
「俺は気が気じゃないんだ、誰かに千鶴を盗られてしまいそうで……」

毎朝、見るたびに嫉妬してしまう
自分の嫌な部分を見るような気がして…

「私が選んだのは斎藤先輩ですから…」
「千鶴」
「甘えたいときがあればまた甘えて欲しいです」

ギュッと抱きしめる力が強くなる
千鶴の甘い温もりを感じながら…

「そうか、思う存分千鶴に甘えてみるとしよう」
「…斎藤先輩…」
「それじゃコレを片付けたら俺の部屋に来てくれるだろう?」

千鶴の耳元で甘えるように囁く愛の言葉
頷いてくれると思い千鶴を見つめると少し照れながらハニカんだ笑顔を見せてくれた




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