藤堂
□君へのこだわり
1ページ/1ページ
「う〜ん…」
うんうん唸りながら千鶴の後ろ姿をじっと見る。最近の俺はよくそうしているみたいだ。で、見るのは主に後頭部ら辺。
「平助くん?」
どうかしたの?と千鶴が聞いてきた。いや、俺がどうしたっていうか千鶴をどうも気にしてるっていうか。
まぁ気になることは聞いてみるに限るしな。うっし。
「なぁ、なんで髪下ろしたままなんだ?」
「えっ?」
うん。そんな反応されんのも仕方ねえかな。千鶴は目をぱちぱち瞬かせて自分の黒い髪の先を見つめた。
「……変?」
「可愛いけど、」
「けど?」
う〜ん、やっぱり見慣れていたせいか千鶴のうなじが恋しい。って変態的な意味じゃねえから断じて違うから!必死になるあたり怪しいとか思わないでよ頼むからさ!話、話戻そう。
…前はさ、後ろで纏め上げてたじゃん。まぁ俺もだけど今は俺のことはいいんだってば。そんで、今は男装する必要もなくなって普通の女の子の格好してて、正直めちゃくちゃ可愛い。けれど、どうも俺は髪を上げた千鶴が見たいらしい。
とかなんとか思いながら返事を待て状態の千鶴の髪に触れた。
「簪とか持ってたよな?」
「うん」
「じゃ、貸して」
「…平助くんが使うの?」
「なんでだよ!いいから」
小さな引き出しから取り出した簪を受け取り千鶴を座らせた。
「じっとしてろよ」
指触りの良い髪を少しの間堪能して、髪を結い上げた。
丁寧に丁寧に。最後に簪を挿して手鏡を渡した。
我ながら力作。やっぱ似合うなぁ、千鶴。
「千鶴は髪上げてんのが似合うぜ」
「そう?」
「そう!」
あーやばい。
俺今めちゃめちゃ顔緩んでねえ?可愛すぎんだろ千鶴ちゃんよぉ。
まだ鏡で見ている千鶴の白いうなじを眺める。いや、だから変態じゃねえから。
「ありがとう」
俺の自己満足でやったのに千鶴は笑ってくれた。もう駄目だ、好きすぎる。
明日は君に何をしようか。
いつの間にか、俺は明日を待つのが怖くなくなっていたんだ。
091208