沖田
□約束は小指で
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こんな自分にも絶対に護りたいって思えるような感情が残っていたなんて。
隣に座る君を見て安堵出来てしまう。つくづく僕は単純な生き物だと笑ってしまえば千鶴ちゃんがこっちを向く。拍子に、前より長くなった髪が揺れた。
空が貫けるほど高い。
これほど穏やかな刻を過ごしてしまえば忘れてしまいそうだ。
この体を蝕む存在と、この先の現実を。
「千鶴ちゃんはこれから先何がしたい?」
「わたしは…総司さんとこうして空を見上げてたくさんお話したいです」
「今もしているじゃない」
「ずっとです」
欲が無いのか。
それとも我が儘なのか。
笑う君の願いは僕にとっては残酷で、それでいて嬉しすぎるもの。
僕はそれを聞いてしまって何を与えられる?
「なら賭けてみる?」
「……なにをですか?」
そうだなぁ…と考える仕種をする。
「来年その願いが叶っていたら君の勝ち。そうじゃなかったら僕の勝ち」
結果は見えているのに。
狡い言葉ばかりが出てくる。
「………良いんですか?私が勝ちますよ」
返された言葉と強い口調に驚いて千鶴ちゃんを見る。
口元を噛み締めて、震える体を必死に隠して僕を見ていた。
ああ、ごめんね。
僕はいつも君を傷付けてばかり。
「凄い自信だね」
「わたしが勝ったら…また花飾り、作ってください」
「…いいよ。なら僕が勝ったら?」
そう聞けば君は笑った。
「また違う願いが出来てしまっているんでしょうね」
……本当、君には敵わない。
「ならその時は僕の言うこと聞いてよね」
「はい!約束です」
「うん。約束」
指切りげんまん。
あ〜あ、針千本は嫌だなぁ。
柔らかく絡めた小指に小さく苦笑い。
結果をふたりで確かめた時、僕は勝ったら何を望もうか。
(…そうだ)
雲が空を飾る色を変える瞬間をふたりで眺めた。
(たくさんこの世を見て。それで感じたものを僕に話して欲しいな)
その時はまたこうやって、空を眺めたいな。
そしたら近藤さんやみんなと一緒にそれを聞きたい…
あおくて遠い高い空。
まだそこにはいけないや。
091109