藤堂

□目が醒めた
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宵の闇に目が覚める。起きてみればあたりは不気味な位静まり返っていた。部屋から出る気にもなれなくて普段使わない頭でいろいろ考えてみたり。考えれば考えるほど脳に浮かぶ言葉はどれも後ろ向きなものばかりで嫌になる。
今の俺って、なんだろう。あやふやな気持ちのまま自分で決めて新選組から離れていったくせに後悔してばかりだった。死ぬのが怖くて、独りになるのが耐えられなくてあんなモノに手を出した。人と違うってことがこんなにも辛くて不安になるものだなんて思いわなかった。
…いや、もう俺は"人"という存在ですら無い。
以前、千鶴が羅刹となった隊士に襲われたことがあった。その時はそいつが醜く見えていたけれど、今の俺はあいつと同じ。自分もあんなことになってしまう可能性はある。だからこそ、俺は俺が憎らしい。そんなことをしてしまう位ならせめて武士として腹を切りたい。…そんなこと出来やしないくせにかっこつけてたりしてさ。
はは、馬鹿みてえ。
いいや、馬鹿だよな。
やっと立ち上がって見た夜空は酷く綺麗で。中心に輝く月が唯一闇を照らしてくれている。俺は昼間は眠ってしまっているからなかなか皆とは会えない。表向きは死んだことになってるから。人としては死んでいる?俺はなんだろう。羅刹?まぁそうなんだけどさ。他にはなんにも無いのかな。はぁ、こんな沈んだ気持ちのときにあいつの顔が一目見れたらこんな気分だって嘘みたいに晴れるのにな。なんて。望むだけ無駄なことだって分かってる。分かってる、つもり。

「せめて夢では会えるといいな」

これは自分で決めたこと。あいつが今眠っているのなら、俺が代わりにこの真夜中の月を仰ごう。そしたら昼間は俺の代わりに太陽の下で笑っていてほしい。なんて勝手な自己満足。これくらいはさせてくれたって構わねえだろ?
…なぁ、なんでそんな闇の中でひとり堂々と輝いていられるんだよ。俺にはお前が酷く羨ましい。

「朝まで起きてられっかな〜…」

このままここに居ればいけそうな気がする。たぶん。それでもしも千鶴に会えたら挨拶でもしてみるか。

月と太陽に永遠のおはようとおやすみを。











目が醒めた
(こんな明るい夜だと再び眠るのが臆病になりそうだ)








091105
ひらひら様

素敵企画に参加させてもらいました。
ありがとうございました。


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