斎藤

□可愛い人
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会社から帰ってきたはじめさんを向かえるのが嬉しい日課となりはじめた日だった。

「はじめさん」
「……」
「やっぱり寝てる」

この状況は数時間前に遡る。久々に呑んで帰ると何故か沖田さんから連絡があった。男同士で呑むのも楽しそうだな、なんて悠長に考えていたのが悪かった。
帰ってきたはじめさんは沖田さんに担がれていて、普段の彼なら考えられないようなことだった。

『呑ませすぎちゃった』

なんて悪戯っ子のような笑顔で言った沖田さんに思わず溜め息。とりあえず、と運んでもらったのは良いが今だに眠っているはじめさんに多少なりとも心配を抱く。

酒に強く酔った姿など見たことがなかった為、どうなるものかと寝顔を見る。
赤みを増した頬に幼く感じる寝顔。

(…可愛い)

まじまじと観察をしているとうっすらと開く目と合った。

「ん、」
「目が覚めましたか?」
「…千鶴?」
「おかえりなさい」

まだ状況を理解出来ていないのかはじめさんは辺りをゆっくりと見渡して私を見た。ただいま、と返してくれたあたりあまり酔っていないんだとホッとした。

後にその判断は間違っていたと気づくのだけれど…


「……会社で」
「はい」
「お前のことを聞かれた」
「えっ?」
「答えようとしたら総司が来て余計なことまで話初めた…」

沖田さんが…、
はじめさんは沖田さんを物凄い剣幕で睨みつけていたんじゃないかな。…想像しやすいかもしれない。

「そしたら写真まで見せ出して、」

そこで止まったかと思った瞬間、はじめさんは起き上がり私を抱き寄せた。いつもより熱くて、そこで酔っているんだと確信した。

「……千鶴は、俺のだ」
「私は、はじめさんのですよ」
「誰にも…渡さん」
「離さないで下さいね」
「…千鶴」
「はい」

体重が一気にかかってきて再び眠ったと規則的な呼吸が教えてくれた。

「せめてスーツくらい脱いでくださいよ」

眠るはじめさんの髪を撫でた。いつもと立場が逆転していて可笑しいなと笑みが零れた。

(この可愛い姿は、私にだけ見せてくださいね。)

隣に眠る愛しい人にそっと呟いた。













091024

甘えん坊はじめちゃん
千鶴ちゃんがどなた立場


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