原田
□病は気から
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(喉痛え…)
渇いた喉からは掠れた声しか出てくれねえしおまけに鼻にまできてやがる。風邪か?でも頭痛とかはないんだよなぁ…
「大丈夫ですか?」
「あぁ、心配ねえっくしょい!」
「……大丈夫、ですか?」
あーかっこわりぃ。
今日は千鶴がくれたポケットティッシュが重宝しそうだな。
保健室で薬でも貰おうものなら山南さんの眼鏡が素晴らしく逆光していたから笑顔のまま回れ右してきちまったし、新八は馬鹿は風邪にかからねえよと笑い飛ばしやがる。
俺に優しいのは千鶴だけだなちくしょう。
「大丈夫だって。明日には治ってるといいな」
「願望ですか…」
「まぁ風邪って訳じゃねえだろうし何とかなんだろ」
「咳や鼻だけでも立派な風邪です!」
もっとご自分の身体を大事にしてください!
なんて叱られたけど怖くねえし、そんな上目遣いで睨まれたって可愛いだけだろうが。そのまま口にも手にも出そうになるのをなけなしの理性を総動員させて耐えた。頑張れ俺。…はぁ、俺ってまだ若いんだな。
「千鶴が俺の分まで心配してくれてるからいいんだよ」
「良くないです」
「俺は千鶴の心配するからおあいこってことだろ」
うんうん。いい考えだ。
寧ろ頬を膨らまして拗ねてる千鶴の方が心配なんだけどな、俺は。変な虫が付かないか不安すぎる。
「病は気からっつーだろ?」
「?、はい…」
「だから、大丈夫だ」
「??」
先人も上手い言葉を考えたもんだよなぁ、と喉の通りを良くするように咳をして千鶴を見れば顔には疑問の色。言ったまんまだから説明しろっていうのは難しいぜ千鶴ちゃんよぉ。
それに、どんな薬よりも俺には千鶴っていう最高の特効薬があるしな。…こんなことを考えても恥ずかしくないのは相手が千鶴だからだと思っておくか。
(とりあえずマスク買っとこう)
本当に風邪引いて休んじまったら会えなくなるしな。それだと風邪どころか死んでしまうだろうからな。
ポケットに入れたティッシュは、あと数枚。
091020
馬鹿っぽい原田さん