永倉
□変化への手前
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「永倉さんどうしたんですか?」
夜の巡察から帰ってきて、小腹が空いた。
何かないかと勝手(台所)にきたけどなかなかなくて物音を立てすぎたか?
そう思いながら声の主を見れば千鶴ちゃんで、
「悪ぃな起こしちまったか?」
「いえ…なかなか寝付けなくて少し歩いていたんです」
「こんな夜更けに女の子ひとりで歩いてたら危ねえよ」
「すみません…」
居候に近い状態の千鶴ちゃんは女の子ってこともあり軟禁状態。まぁ仕方ないけどやっぱ無理してんだろうな…男所帯に女の子ひとりだしな。
「謝んなって!そうだ、なんか食い物ねぇかな?小腹空いちまってよ」
「それでしたらあの戸棚に昼間井上さんがくださった干し柿が…」
「おお!…でも食っていいんかな」
「確か夜の巡察の方々の分だとおっしゃってました」
流石源さん!
と喜ぶと千鶴ちゃんがすぐに取りますね、と戸棚に向かう。
「………」
「千鶴ちゃん」
「待って、くださ、い」
いやいやどう見ても無理だろう。
千鶴ちゃんは背伸びして取ろうとしてくれてるけど微妙に届いてない。
しかし千鶴ちゃんにどうぞって言われて食いてぇし…。
うんうん唸っている間千鶴ちゃんの高く結われた髪を見ていた。左右に揺れていて、愛くるしい。馬鹿みてぇにそう思ってみたり。
(そうだ、)
「、えっ!!?」
ひょいと千鶴ちゃんの両脇に手を入れて持ち上げた
「千鶴ちゃん取ってくれんだろ?」
「そ、そうですけど…」
「取ってくれるか?」
「、…はい」
千鶴ちゃんの手に干し柿があることを確認してゆっくりと降ろした。
「どうぞ…」
「ありがとよ!
…ところで千鶴ちゃん」
「はい」
「軽すぎだって。遠慮しねぇで、もっと飯食った方がいいぜ!」
「え…?」
干し柿をひとつ口へ運ぶ。
お、甘いな。
「一緒に食うか?」
「いえ、今はいいです」
「…何か顔赤くねえ?」
風邪か?
手の甲を頬に当てると少し熱かった。
「だっ大丈夫です!お休みなさい!」
凄い勢いでお辞儀をした後すぐにぱたぱたと去っていってしまった。
「……甘いな」
今の顔が今夜は忘れられそうにない。
090927
千鶴ちゃんはぱっつぁんが帰ってきたって気付いて"お帰り"と言いたかったんですよ。 夫婦かっ!
ぱっつぁんが攻略対象じゃない分新千への妄想は絶えない。げへへ。
「新千(しんせん)組!」
…なんつって(自重)