Main-T【短編小説】

□心の雨
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降りしきる雨の中、
瞳を潤ませ、
たたずむ少女を
見つけてしまった。



僕は彼女が何故か気になり、
気がついたら見とれていた。


彼女はその場から
いっこうに
動こうとしない。




長い薄茶色の髪、
白いロングのワンピースが
雨に濡れ煌めいている。



いったいどうしたのだろう。



まるで雨に濡れるのを
楽しんでいる様にも見える。



降り注ぐ雨は、彼女の描く
ラインを避けるかの様に
地面に流れ落ち
アスファルトを濡らしていく。




僕は彼女にそっと
傘を差し出した。


彼女は僕が
見えていなかったのか
驚き、楽しそうに
見えた表情は消え
突然泣き崩れた。



僕は呆気にとられ
ただただ呆然と立ち尽くす。



いくら待っても
彼女は泣き止まず、
まるで僕が泣かせたかの様に
周りでは言い始める。



我にかえった僕は
彼女に聞いた。




『どうして泣き出したの、
何か嫌な事でもあったの。』


あまりに泣きすぎたため
彼女は言う事すらできない。



『ここで泣いていても
どうにもならないから
雨宿りしながら
少し休もうよ。』



彼女は首を横に降り
座り込んでしまった。






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