Main-T【短編小説】

□遥か彼方の哀愁
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あの日も
こんな夕日だった。



太陽が沈みかけ、
月が反対側から
顔を出している
明るい穏やかな夕方。



悔やんでは泣き、
憎んでも泣き、
どうしても諦める事など
出来なかった。



人を、そして
君を信用しては
いけなかったのだね。




五時頃の電車は
余り人が乗っていない。


珍しいことに
今日は僕以外に
車内には人が居なかった。



電車は僕の貸し切り状態で
次の駅へと向かった。


車内アナウンスは
何時もと同じ台詞が放送され、
座り心地の悪い硬い椅子は
不思議と安心感をもたらす。



夕日がよく眺められる
窓際の席は僕の特等席。



ひっそりと壁に体を預け、
窓に頭を付ける。



哀しい訳ではなかった…
なのに不意に涙が流れてくる。



後悔ばかりが先走り、
自分を操作出来なくなり



壊れるだけ。





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