Main-T【短編小説】
□貴方だけ
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いつも頭に浮かぶのは貴方。
どうしてこんなに好きに
なってしまったのだろう。
これはいけない事
なのかもしれない。
けれど、貴方を
嫌う事は出来ない。
「私ね、好きな人が出来たの。」
そう言った雪穂の顔は
とても嬉しそうだった。
私も雪穂につられて
笑ってしまったが
内心とても焦っていた。
もうこんな事は
慣れているだろう…。
自分で自分に
言い聞かせる言葉。
けれど、心の中の
私はそれを
認めようとはしない。
泣きそうになったがこらえて、
震える声で
「おめでとう。」と言った。
雪穂は「ありがとう。」と
言い、私に抱きついてくる。
雪穂からは自然な
シャンプーの香りがした。
私は雪穂の頭をなでて、
また「おめでとう。」と言う。
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