Main-T【短編小説】
□貴方だけ
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「気付いてあげられなくて
ごめんね、嬉しいよ。」
雪穂が私の体から手を放して、
私の腫れあがった瞼に触れた。
「私も大好きだよ。
絵里子は私の大切な人だよ。」
そう言って、雪穂は
私の瞼に優しくキスをする。
あの時の雪穂の唇は
とても温かかった。
辛い片想いが今終わった。
長い片想いが今終わった。
秘密の片想いが今終わった。
雪穂は私のものには
ならなかった。
けれど大丈夫、
私はまだ前に進める。
辛かったこの恋は
いつか笑い飛ばせるくらいの
思い出に変わってくれる。
貴方の前で泣くのは
今日で最後にする。
次に見せるのは笑顔。
貴方だけに見せる笑顔。
終