Main-T【短編小説】

□貴方だけ
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私に残っているものは
笑顔の裏の悪意だけだよ。



これ以上、その人の
話をしたら私…雪穂の
好きな人を殺してしまうかも。


そんな事になったら
貴方は悲しむよね。



けれど、大丈夫。


貴方には私が居るから。
ずっと傍に居てあげるから。


そしたら貴方は
悲しまないでしょう。



雪穂の話を黙って
聞きながら色んな事を
考えていた。


次第に私の瞳がぼやけてきた。

「絵里子は
好きな人いないの?」



雪穂は私に問いかけてきた。



私は雪穂の目を
真っ直ぐ見つめた間々、
ゆっくり口を開いた。


「貴方よ、雪穂。
私が好きなのは貴方なのよ…。」



雪穂は手を放した。

きっと困っている。


私は貴方を困らせてしまった。

ごめんね、雪穂。

私は手で顔を隠した。



泣いている姿を貴方だけには
見られたくないから。


雪穂は私を抱きしめた。


そして、「ありがとう。」と
小さく言い、私を
抱きしめる力を強くした。



私も雪穂の背中に
腕をまわした。



雪穂はずっと
「ありがとう」と言い続けた。





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