Ether

□*×1 世界の境界線
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現実にない事を望む人がいる。

それは例えば、魔法とか、死神とか、錬金術とか、エトセトラ・・・・・・。よくマンガなどで取り上げられる事だ。

少し頭の上がテカッている男性教師が、公民の抗議をしている。

「裁判所は三つに分けられているんだ。えー、それで、地方裁判所はたぶん、日本の中には六つくらいあり、最高裁判所はひとつしかない。それがあるのは東京だ」

ニュースで最近よく耳にする事が多くなったことばかりが、ずらずらと並べられていく。

てゆーか、先生、多分て何ですか、多分て。しかも今、六時間目。めっちゃ眠いんですけど。アンタのその喋り方が殊更に眠気を運んで来る。

心の中で愚痴を言いながら天野雫は気付かれないように溜息をついた。

年齢は15の高校一年生だ。ショートカットよりも少し長い茶色がかった髪をしている。

内心、本気で数学だけはこの世界から消えればいいのにと思っている。現在両親が仕事の都合で海外出張中のため、兄と二人で生活している。
一応、注意されないようにノートは取りつつ、アニメの事や、マンガの事、所謂、趣味の事を考えている。

ふと視線を窓の外に移すと、綺麗なラインを描いて飛行機雲が一筋、空の彼方へと続いていた。

―あれってもしかしたらガンダムの飛行機雲
だったりして。乗ってるの誰かなぁ・・・・・・。あ、でも、ガンダムだったら粒子か。

取り留めなくそんな事を考え続ける。
そして、ノートに黒板の文字を写し終えたところで、終業のチャイムが鳴った。

週番が号令をかけ、そのまま帰りのホームルームに移行する。ほとんど連絡もなく、スムーズにホームルームが終わると、今度は掃除だ。

丁度雫は掃除当番だったので、掃除用具入れの方へと向かう。

「しーずーくー!」

背後からガバリと抱きつかれ、よろめく。

「ちょ、葵!何すんの!」
「えへへー、毎回恒例の掃除野球のお知らせだよー」

雫より長い髪を後ろで一つにまとめている少女、上梨葵が笑顔で言った。

掃除野球というのは、雫のクラスで毎回掃除の時間に行われる、ちょっとした遊びだ。

ノートを丸めて作ったボールをバット代わりの箒で五発の内、打ち返せた数で競い、その数が多ければ、その人の勝ち。少なければ負けで、負ければ罰ゲームとして、この学校に伝わる伝説を実行し、その一部始終をクラスの全員の前で報告。くだらない事この上な
い罰ゲームだ。

「メンドイなぁ・・・・・・、で?今日のお相手は?」

半ば呆れながら、雫が葵に問い掛ける。

「クラス一の野球馬鹿、清水翔くんでーす♪」

見ると、短く借り上げた髪に、長身の男子生徒がノートで作ったボールを持ってすでにスタンバイしていた。
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