女々しい百合を
□石ころと宝石
2ページ/3ページ
なんで彼女は、こんなにも可愛らしいものが似合うのだろうか。
運動は私の方が成績は上である。
だがしかし、彼女はその他のことで私を容易く追い越していった。
私は、勉強はからっきしダメだった。今も赤点の一歩手前だ。
この高校には勉強ではなく、運動面で認められたので入れたのだ。
私とうさぎは小学校からの付き合いだ。いつも二人で一緒だった。
だが、私とうさぎは本当に対照的な存在だったと思う。闇と光、夜と朝といったところだろうか。
うさぎは昔からとても可愛らしくて、中学の時は先輩後輩、男女問わずに可愛がられていた。
しかし私は本当にその真逆だった。生まれつきの目付きのせいで先輩には目をつけられるし、男とはいつも喧嘩ばかりしていた。
でも後輩の一部にはかっこいいと一方的に慕われていたりもした。
私はそれをも嫌がっていたが。
それさえも煩わしいと思っていた私は、さぞ可愛くもないクソ生意気なクソガキだったんだろう。
先生達からもやけに目の敵にされていた。勉強で私ばかり指名してきたりもした。一度だけキレて教卓を蹴り飛ばしたこともあった。
たった一時間の授業で四回も指名が来れば、誰だって嫌になる。
しかし、人気なうさぎと友達だったためなのか、そこまで大規模な騒動は発生しなかったのだ。
すると周りにいる中学生は、ギャイギャイとまた騒ぐわけだ。
日野って兎に守られてるのぉ?
星山につきまとってる奴だ!!
直接私に言うわけでもなく、聞こえるか聞こえないかの、微妙かつ絶妙な声で陰口を言うのだ。
中学というものは、ある意味で一番大変な時期なのかもしれない。
「……みっちょんってばあぁ!!また黙っちゃってるし……!!」
とうさぎはプリプリと怒っているのか、拗ねているのかわからない可愛らしい表情で私を見ている。
「……あぁ、うん。……なんでもない。……なんか、今日は私ってば変だな。ごめんね。うさぎ」
あぁもう!!
なんなんだろうかこれは。胃がムカムカ。いや、これは違うか。そういう嫌悪感、倦怠感ではない。
なんだろうか。ジリジリと胸が焼けるように痛む。私は何かしらの病気かと一瞬考えたが、大きい病には一度もかかったことはない。
ま、まさかとは思うが、これは一種の……恋煩いなのだろうか!?
いやいやいや!!ありえないだろ!!一体何を考えてるんだ私は!
しかも、ごめんってなんなんだ。
私はいま、謝るようなことでもしたのだろうか。なんなんだ?
そう考えると本当に胃の方がムカムカしてきた感じがする。胃を直接つかまれている感覚もして、中身が逆流しそうで気分が悪い。
「みっみつ?……なんだか、本当に顔色悪いよ!……大丈夫!?」
と、本当に心配そうに尋ねてくるうさぎだったが、今の私にはそれが鬱陶しくてたまらなかった。
すっと伸びてくるうさぎの手を私はパシッと軽めに叩き落とした。
いまは、誰にも私の体を触れてほしくはなかったのだ。例え、それが目の前の唯一無二な親友でも。
「いたっ!……み、みつ!?」
と叩かれた手を驚いたように見つめて、私を見る。しかし私は、彼女の顔を見ることはなかった。
誰も見たくない。いや、見れない。例えそれが目の前の親友でも。
「ちょっといまはイライラしてるみたい。うさぎに対してじゃないから……先に帰っていいよ。……八つ当たりしちゃってごめん!」
とだけ彼女に伝えてから、私は彼女、否、全てを振り切るようにそこから颯爽と走り去った。
「みつ!……ま、待ってよ!!」
と兎は焦って追いかけてくる。
「うさぎ……ごめん」
今度の親友に対してのごめんは、全てへの謝罪。そして怒り。
自分勝手な考えを親友に押し付けている私には、怒りを。
そして今の言葉で傷つけてしまった親友には、精一杯の謝罪を。
.