女々しい百合を

□石ころと宝石
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なんで彼女は、こんなにも可愛らしいものが似合うのだろうか。



運動は私の方が成績は上である。

だがしかし、彼女はその他のことで私を容易く追い越していった。



私は、勉強はからっきしダメだった。今も赤点の一歩手前だ。


この高校には勉強ではなく、運動面で認められたので入れたのだ。



私とうさぎは小学校からの付き合いだ。いつも二人で一緒だった。



だが、私とうさぎは本当に対照的な存在だったと思う。闇と光、夜と朝といったところだろうか。


うさぎは昔からとても可愛らしくて、中学の時は先輩後輩、男女問わずに可愛がられていた。







しかし私は本当にその真逆だった。生まれつきの目付きのせいで先輩には目をつけられるし、男とはいつも喧嘩ばかりしていた。


でも後輩の一部にはかっこいいと一方的に慕われていたりもした。




私はそれをも嫌がっていたが。



それさえも煩わしいと思っていた私は、さぞ可愛くもないクソ生意気なクソガキだったんだろう。




先生達からもやけに目の敵にされていた。勉強で私ばかり指名してきたりもした。一度だけキレて教卓を蹴り飛ばしたこともあった。


たった一時間の授業で四回も指名が来れば、誰だって嫌になる。



しかし、人気なうさぎと友達だったためなのか、そこまで大規模な騒動は発生しなかったのだ。



すると周りにいる中学生は、ギャイギャイとまた騒ぐわけだ。



日野って兎に守られてるのぉ?

星山につきまとってる奴だ!!



直接私に言うわけでもなく、聞こえるか聞こえないかの、微妙かつ絶妙な声で陰口を言うのだ。


中学というものは、ある意味で一番大変な時期なのかもしれない。





「……みっちょんってばあぁ!!また黙っちゃってるし……!!」




とうさぎはプリプリと怒っているのか、拗ねているのかわからない可愛らしい表情で私を見ている。





「……あぁ、うん。……なんでもない。……なんか、今日は私ってば変だな。ごめんね。うさぎ」





あぁもう!!



なんなんだろうかこれは。胃がムカムカ。いや、これは違うか。そういう嫌悪感、倦怠感ではない。



なんだろうか。ジリジリと胸が焼けるように痛む。私は何かしらの病気かと一瞬考えたが、大きい病には一度もかかったことはない。



ま、まさかとは思うが、これは一種の……恋煩いなのだろうか!?




いやいやいや!!ありえないだろ!!一体何を考えてるんだ私は!



しかも、ごめんってなんなんだ。




私はいま、謝るようなことでもしたのだろうか。なんなんだ?



そう考えると本当に胃の方がムカムカしてきた感じがする。胃を直接つかまれている感覚もして、中身が逆流しそうで気分が悪い。





「みっみつ?……なんだか、本当に顔色悪いよ!……大丈夫!?」




と、本当に心配そうに尋ねてくるうさぎだったが、今の私にはそれが鬱陶しくてたまらなかった。



すっと伸びてくるうさぎの手を私はパシッと軽めに叩き落とした。




いまは、誰にも私の体を触れてほしくはなかったのだ。例え、それが目の前の唯一無二な親友でも。




「いたっ!……み、みつ!?」




と叩かれた手を驚いたように見つめて、私を見る。しかし私は、彼女の顔を見ることはなかった。




誰も見たくない。いや、見れない。例えそれが目の前の親友でも。





「ちょっといまはイライラしてるみたい。うさぎに対してじゃないから……先に帰っていいよ。……八つ当たりしちゃってごめん!」





とだけ彼女に伝えてから、私は彼女、否、全てを振り切るようにそこから颯爽と走り去った。




「みつ!……ま、待ってよ!!」




と兎は焦って追いかけてくる。




「うさぎ……ごめん」



今度の親友に対してのごめんは、全てへの謝罪。そして怒り。


自分勝手な考えを親友に押し付けている私には、怒りを。


そして今の言葉で傷つけてしまった親友には、精一杯の謝罪を。








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