短き桜を

□裏切り
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私は貴方が本当に大嫌いだった。いまでも貴方が大嫌いだけどね。




「ねぇ……聞いてほしいんだ」



私に向けてきた、その素敵な笑顔も、とろけるカスタードクリームのような、可愛らしい笑顔も。

すべて、嘘だったんだもの。




「僕は君が好きだよ。だから僕に君をずっと守らせてほしいんだ。君の隣にずっといたいんだ!!」




と言ってきた甘美な貴方の言葉も大嫌いだ。だって、貴方はいってしまった。遠い遠い遠い所へ。

私には届かない遠く果てしないところへと貴方はいってしまった。



「嘘つき……嘘つき……!!」




守らせて。と言ってきたくせに結局、一度も守ってくれなかった。

貴方は私の隣にずっといてもくれなかったよね。そして、貴方は何もかもを私に嘘をついていた。








貴方を蝕む病気の事も余命の事もぜんぶ、ぜんぶ、ぜんぶ!!貴方がいなくなる少し前に知ったよ。




こんな、こんな残酷な終わり方はあんまりじゃないのか。

私は、こんなダメな私なんかを好きになってくれた人がいるならずっと尽くそうかな。だとか、恥ずかしい想いも持っていたのに。




「ずっと嘘をついててごめん。傍にずっといられなくてごめん。こんな嘘つきの僕のそばにいてくれてありがとう。遠くにいっても僕はずっと君の隣にいるんだから」




なんて、ベッドに寝ながら私に笑顔で話す貴方を見て、私は泣いた。大きな声をあげて泣いた。





「バカ!嘘つき!そばにいれるわけないじゃないのよッ……!!」



他の人がいることなんて気にはならなかった。無性に悲しかった。


もう声を聞けないって。笑顔も見れないって。愛の旋律だって聞けないんだってわかってしまった。




「ほら……泣かないで。……君の笑顔が、僕は一番好きなんだよ」



そんな、飛行機に乗っても届かないくらいに遠くにいっちゃったら、傍にいられないじゃない。

心が近くにあったとしても、体がないんなら意味がないんだよ。そんなのは矛盾に過ぎないのに。




「あんた……あんたなんか……」




私は大声で貴方に向けてアンタなんか大嫌いだ!と叫びたかったのに。大声で、アンタなんて忘れてやる!!って叫びたかったのに。


できなかった私に、泣いた。

……ねぇ、アンタはまだ私の傍にいるのかしらね。もしもいるんなら、私は大声で叫んであげるわ。






「アンタなんてアンタなんて、アンタなんて大嫌いだったけど、それ以上に大好きだったわよ!!」




ほら、これで私も矛盾でしょう?









end.
 

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