銀魂

□第1訓
8ページ/15ページ


「…スンマセン、オッサン。その汚ならしい汚物にハエが止まってたんで思わず。…ってアレ?汚物だって思ったら…顔だったんですねェ。ゴメンなさい、間違えました」
ニッコリと微笑んだ蘇芳の顔から想像もつかない暴言が連発する。
天人達もお妙達も一瞬呆然とするが、すぐに我に戻り、部下の天人が蘇芳を取り押さえ、床に顔を押さえ付けた。
「「蘇芳さん!!」」
新八とお妙が叫ぶ。
蘇芳はフ、と笑って2人を見て口を開いた。
「女の子の手は…こんなオッサンを殴る為のモンじゃないだろ」
「…蘇芳さん…」
「このォ…ボケェ…人間の分際で天人のワシに手ェ出してエエと…」
眼鏡天人は拳を握り、振り上げ叫んだ。
「思っとんかァァ!!」
しかし、天人の拳は蘇芳に当たる事は無かった。
何故なら、その拳は銀時に掴まれ、止められたからである。
「…その辺にしとけよ。コイツの仕返し、半端ねェからよ」
そう言う銀時の瞳は瞳孔が開き、その手は天人の腕がメキメキと軋む程の握力で掴んでいた。
その迫力に圧されたのか天人は蘇芳から離れ、お妙達は蘇芳に駆け寄った。
「なっ…何やワレェェ!!この道場にまだ門下生なんぞおったんかイ!!」
バッと銀時は天人から手を放し、蘇芳を見る。
蘇芳は軽く冷や汗をかいた。
ヤバい、銀怒ってる。
首を突っ込む気は無かったのだが、お妙達の大事な物を馬鹿にする天人を見ていたらイライラしてどうしようもなくなってしまい、しかもお妙が天人を殴ろうとしていた。
蘇芳は女の子の手は誰かを殴る為の物ではなく、護る為の物だと思っている。
だから、例えゴリラに育てられた様な(酷い暴言)お妙でも、手を汚させたくなかったから自分で殴ったのである。
こんな考え方はクサイ考え方だし、護る云々からは誰にも喋った事はない。
そう思っていると、天人は意地悪く笑いながら口を開いた。
「…ホンマにっ、どいつもコイツも…もうエエわ!!道場の件は…。せやけどなァ、姉さんよォ。その分アンタに働いて返して貰うで」
ゴソ、と天人は自分の懐を探り、一枚のチラシを出してきた。
それには眼鏡天人と同じ顔の女性らしき天人と、空を飛ぶ宇宙船のシルエットが描かれていた。
「コレ。ワシなァ、こないだから新しい商売始めてん。ノーパンしゃぶしゃぶ天国ゆーねん」
「ノッ…ノーパンしゃぶしゃぶだとォ?!」
何だよ、その組み合わせ。
蘇芳はそう思ったが口には出さなかった。
「簡単にゆーたら空飛ぶ遊郭や」
「お前…遊郭なんざ今の江戸じゃあ禁止されてるぞ?」
「あぁ、そうや。やから空の上ですんねん。役人の目が届かんからやりたい放題や」
蘇芳の目がスッと細くなる。
法律違反。しかも、売春と来たか。
元々父親の代から続く借金なんて、そんなに長い間返済してたら道場の維持費を差し引いても、そろそろ完済出来ていてもおかしくないか。
なのにまだ返済していると言う事は、コイツ等、地球人だからって馬鹿みたいに高い利子を付けているか、新八達の父親が馬鹿みたいに物凄い金額を借りたか。
…新八達の父親も面倒な業者に手を出したもんだ。
…この眼鏡…幾らくらいになるか。
蘇芳の変化に気付く事無く眼鏡天人は話を続ける。
「色んな星のべっぴんさん集めとったんやけど、あんたやったら大歓迎やで。まァ、道場売るか、体売るかゆー話や。どないする?」
「ふざけるな!そんなの行く訳「分かりました、行きましょうえ゙え゙え゙え゙え゙!!
「こりゃたまげた孝行娘や」
眼鏡天人はニヤニヤしながらお妙の肩を抱き、道場を後にしようとする。
新八は理解出来なかった。
「ちょっ…姉上ェ、何でそこまで…!もういいじゃないか!ねェ!!姉上!!」
新八の呼び掛けにお妙は立ち止まり、静かに語り始めた。
「…新ちゃん。貴方の言う通りよ。こんな道場護ったっていい事なんて何もない。苦しいだけ…。でもねェ、私…捨てるのも苦しいの。もう取り戻せないものと言うのは、持ってるのも捨てるのも苦しい」
お妙は振り向き、哀しげな微笑みを浮かべ、一言呟いた。
どうせ、どっちも苦しいなら、私はそれを護る為に苦しみたいの
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ