銀魂

□第1訓
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「…姉上。やっぱりこんな時代に剣術道場やってくのなんて土台無理なんだよ。この先剣が復興する事なんてないよ。こんな道場必死に護ったところで僕ら何も…」
「損得なんて関係ないわよ」
お妙は新八の言葉を遮り、意志の強い瞳で新八を見据えた。
親が大事にしてたものを子供が護るのに、理由なんているの?
お妙のその言葉に蘇芳はピクリ、と肩を揺らして反応した。
この場で蘇芳の反応に気付いたのは唯一銀時だけだった。
親の大事にしてたものを護る理由、そんなもの…。
絶望と失望と苦痛と怒りと哀しみ。
それらの感情が全部入り交じった蘇芳の瞳。
銀時はその瞳をよく知っていた。
昔、家族の話が聞こえる度に蘇芳がよくしていた瞳だからだ。
銀時がまた何かボケをかまして場の空気を変えようと思ったが、その必要はなかった。
珍妙な髪型の天人が数人、道場の扉を蹴破って入って来たからだ。
「くらァァァァ!!」
「今日と言う今日はキッチリ金返して貰うで〜!!ワシもう我慢でけへんもん!!イライラしてんねんもん!」
一際身長が小さい、眼鏡を掛けた天人がキャーキャー騒いでいる。
それを見て、お妙の攻撃から復活した銀時が呟いた。
「オーイ、借金か。オメーらガキの癖にデンジャラスな世渡りしてんな」
「俺達が作ったんじゃない…。父上が「新ちゃん!!」!」
「何をゴチャゴチャぬかしとんねん!!早よ金持って来んかいボケェェ!!早よう帰ってドラマの再放送見なアカンねんワシ!!」
「ちょっと待って、今日は…!」
「じゃかしーわ!!」
借金貸し天人は頭を抱え、顔に血管を浮かばせ叫んだ。
「こっちはお前等のオトンの代からずっと待っとんねん!!もォー禿げるわ!!金払えん時はこの道場売り飛ばすゆーて約束したよな!!あの約束守ってもらおか!!」
お妙は目を見開き、叫んだ。
「ちょっと!!待って下さい!!」
「何や!!もうエエやろこんなボロ道場!!借金だけ残して死にさらした馬鹿親父に義理なんて通さんでエエわ!!捨ててまえこんな道場…!!」
拳を握って天人を殴ろうとしていたお妙は目の前で起こった事に驚愕していた。
さっきまで凹んでいた蘇芳が眼鏡の天人を殴っていたのである。
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