銀魂

□第0訓
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その日は、真夏らしく馬鹿みたいにカラッと晴れていた。
銀時は珍しく歩きでジャンプを買いに行く途中で、汗をかきながら歩いていた。
「暑ィ…こんなんだったら原チャリに乗って来るんだった…!!」
ブツブツぼやきながら歩く。
しかし、原チャリに乗るとしてもそれは無理な話だったりする。
何故なら、ジャンプを買う金ならあるが、原チャリの動力源であるガソリンを入れる金さえ今の銀時にはないからである。
「チクショー、あそこで当たりが出てたら…」
…やはり、と言うか何と言うか、パチンコで負けたからこうなってしまったらしい。
そんな事を呟きながら、ふと銀時は空を見上げた。
天人の船が飛び交う上の空は昔と変わらず真っ青で、あの頃と全く変わっていなかった。
…こんな空を見ると銀時は思い出す。

『俺、世界中を旅してみる』

真紅の髪と、黄金の瞳のガキ。
あの頃からもう何年も経ったが、相も変わらず今も想い続けてる奴。
…今頃、何処で何をしているやら。
フ、と笑って前を見た銀時は固まった。
其処には。
「退けぇぇぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!!」
猛突進して来るいかにも悪人面の男。
銀時は面倒事に巻き込まれたくないと思い、避けようとする。
しかし。
横から、一陣の紅い風が吹き抜けた。
「…っ!!」
今のは。
銀時の口元に浮かんだのは、苦笑い。
オイオイ、まさか…嘘だろ?
ちょっと思っただけで、何で現れンだ。
銀さん確かにちょっと「今何してんのかなー、気になるなぁー」とか思ったけど…!!
そう思っている間にも、紅い風は凄まじい勢いで駆け抜け、悪人面の男の横っ面をぶん殴った。
男はぶん殴られた勢いで軌道が横にずれ、倒れた。
風は立ち止まり、倒れた男を足蹴にした。
「…宇宙海賊【雄虎戯(おこげ)】幹部、上総槙だな?」
風、否、真紅の髪を靡かせる青年は倒れた男に問い掛ける。
男は逃げるのを諦めたのか、力無く頷いた。
青年は懐から手帳みたいな物を出して見せ、男に告げる。
「俺は宇宙賞金稼ぎ協会所属の者だ。お前を逮捕する」
そう言いながら手帳をしまい、手錠を取り出して後ろ手に掛けた。
そして、銀時の方を振り向き、青年は口を開こうとして、銀時がそうなった様に、彼もまた固まった。
「………蘇芳…?」
銀時が呟く様に問い掛ける。
「…銀…?」
銀時の記憶の中の子供と、目の前の青年、紫逢院蘇芳の姿が、重なった。
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