銀魂

□第7訓
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「…とにかく、蘇芳兄さん。本家に帰りませんか?」
薄暗く、光源は卓上の電気スタンドと、小さな明かり取りの窓。
典型的な取調室で蘇芳は廉と向き合っていた。
「馬鹿言え。紫逢院の姓を名乗らせてもらってるが、俺は事実上勘当されてんだ」
「………10年と半年」
「あ?」
「…兄さんが、“あの御方”を降ろしてない期間です」
「…もう、そんなになんのか」
「…これ以上降ろさなければ、兄さんが“あの御方”に、殺されかねない。今なら、きっと許していただけるはずです」
「…それはないな。どっちにしろ、次に“アレ”を降ろせば、俺は身体だけ残して、殺される」
「!!」
驚愕に眼を見開いた廉を見て、蘇芳は自嘲の笑みを浮かべた。
「…次に本家に戻る時は、今生の別れになるな。…安心しろよ。“アレ”は俺が死ぬまでちゃんと押さえ付けてやるから、当主とかはお前が継げよ?これだけは“アレ”にちゃんと頼んでおいてやるから」
「兄さん、俺は、そんなモノ要らない!!兄さんさえ生きていれば「紫逢院廉!!」っ!!」
「…それ以上は、言っちゃ駄目だ。…“アレ”に、殺されちゃうから」
「…っ」
冷や汗が廉の頬を伝う。
光を宿さぬ眼。
金色の眼が、廉の心臓を掴み、恐怖で握り潰そうとする。
昔、無理矢理父さんに見させられた光景が過る。

凄まじい悲鳴。

泣き叫ぶ小さい蘇芳兄さん。

真っ暗な、金色の眼。

どす黒い紅い髪。

廉は静かに椅子から立ち上がり、蘇芳の前に立ち、正座し、額を床に付けた。
「も…うし、わけ…ありませんでした…」

廉には、蘇芳の影がいびつに歪み、“化物”の姿に見えた。
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