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□うんめい
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【うんめい】

「運命って信じる?」

突拍子もない言葉に唖然とする私。

「私は信じてるんだけどー…って、聞いてる!?」
「うぇっ!?あー…聞いてるけど…何さ、突然」

呆れつつもおバカなトークに加わる私。平和な世の中だなぁ…としみじみ実感しちゃったり…。

「いやぁ…なんちゅーかさぁ…平和だよねぇ」

(おいおい!『運命』のトークはいずこ!?)

ツッコミを入れるタイミングを逃してしまった私は小さくタメ息。

「こんな良い天気にさ、教室の窓際でチョコなんか喰ってるうちらって、幸せだよね?」
「はぁ…」

次々と話題を変えるヒカリについていけず相槌しか打たない私を気にもせず、ヒカリはしゃべり続けている。

「ケンカとかもしちゃうけど、結局うちら元サヤ…なんかカップルみたいでキモいけど。ははは」

(あ…訳わかんなくなってきたんスけど?ヒカリは何が言いたい訳?)

思った事はすぐ口にする私だけど、しゃべり出そうとする私よりもヒカリの方が若干早かった。

「何だかんだ言ってもうまく友達やってるよね、うん」

一人で頷いてるヒカリに対し、困惑している私。もう好きにしゃべり続けてもらう事にしよ。

「よぉするに、運命なわけよ!!」

…出ました…『運命』繋がってたのね…。

「こーやって、アンタがくっだらないと思ってるうちの話しを、平和な時代の、こぉんな天気の良い日の休み時間にチョコ喰いながら聞いてるって事がさ」
「はぁ…?」
「考えてみなよ?うちらが友達にならなかったら、『今』って時間ない。って事じゃんね?」
「…まぁ、うん。だと思うけど」
「でしょ!?だから、運命なわけよ」
「…ヒカリの『運命』とやらについて、チョコ食べながら黙って聞くのが私の運命なの?」
「そーゆう事。うちと友達になった時点で今日のお喋りは決まってたって事さ」

たまーにヒカリは難しい話をする。分からなくもないけど、やっぱり理解できそうもない。

「まぁ…その…うちが、言いたい…のは、ですね…」

急に口ごもるヒカリ。一体どうしちゃったんだろう。

「……うちと…友達やっててくれて、ありがと!って事」

(分っっかりにくぅ……。)

多分この先聞く事の無いだろうヒカリの言葉に、呆気に取られてしまった。にしてもずいぶんまわりくどい奴…。マイペースで何しでかすか分からないヒカリだけど、今のセリフはグッときた。お互いバカ笑いしながらこの先も変わらずにいる事をちょっとだけ祈った。

『運命』なんてぶっちゃけ信じてない私だけど、ヒカリの存在がちょっとだけ気持ちを動かした…かも。


信じた訳じゃ、ないけどね

☆end☆


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