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□02
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【物語のはじまりは…02】

この物語は私達が見守っている小さな友情のお話です。

月曜日の早朝。ランドセルを背負った女の子が、大通りを右に入った小さな古本屋の扉をそぉっと開き、店の中の様子をうかがっていました。カウンターに座っていた彼女が女の子に気付いて微笑みました。

「これから学校?」

彼女の問い掛けに女の子が嬉しそうに頷きました。そのまま店の奥に目を向け、誰かを発見した女の子はもじもじと俯いたまま動こうとしません。女の子が相手に声をかけるタイミングをつかめずにいると、相手がパッと振り返り女の子には目もくれずに素通りして、外に出ていってしましました。

「どうしたの?」

いつもは元気一杯の女の子がらしくない表情で彼女を見上げました。

「お姉さん…あのね…」

女の子は今にも泣き出しそうな顔で彼女に語り始めました。

「…ケンカしちゃったの」
「さっきの子と?」
「…うん。お友達なの」
「そっかぁ…。そういえばいつも一緒に来てくれてるもんね」
「うん。だけどね…ケンカしちゃったから…」

必死で涙を堪える女の子に、彼女は安心させるかの様に優しく微笑みました。

「学校行ったらまず"おはよ"って言お?そして"ごめんね"って」

彼女の言葉に女の子は困った様に首を傾げました。

「喧嘩した時はね、自分も、相手も…どっちも悪いの。その子の事が大好きなら先にごめんなさいしよう?できるよね」

女の子は少し考えた後小さく頷きました。

「じゃあ、帰りは一緒だね。頑張ろうね」
「…うん!ありがとう、お姉さん」

彼女の言葉に励まされた女の子は笑顔で店から出て行きました。


その日の夕方。彼女が入り口の掃除をしていると、大通りの方から楽しそうな笑い声が聞こえてきました。

「今日は楽しかったね〜。あっ!お姉さーん!!」

声をかけられた彼女が顔を上げると、女の子が彼女に向かって手を振っていました。隣には朝店にいた相手の少女の姿も。

「朝はありがとう!お姉さんも頑張ってね〜」

女の子のいつも通の笑顔にホッとしつつ手を振り返すと二人は仲良く顔を見合わせて笑顔で帰って行きました。

「私も頑張らないと…ね」

夕焼け空を見上げてそうつぶやくと満足そうに頷き掃除を再開しましました。


女の子が仲直りできて私達古本も一安心です。これでまたあの二人の楽しげな話し声が聞けるんですから…。


さて。次はどんな人達との物語をお話しましょうか…。私達の周りには数え切れない程のエピソードがまだまだあるのですから。


《その話は、また、いつの日か》

-END-


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