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□視線の先に、
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『視線の先に、』


「またみてるのー?」

私の言葉に一瞬だけ倉田君がニヤついた。
そんな倉田君の視線の先にはいつもゆうちゃんがいる。


「かわいいよなぁ…」

「…うむ」

私も自然とゆうちゃんに目を向けた。


宮内裕子。
外見、内面共に文句なし。
もてる。うらやましいほどとにかく可愛い。

そして、私の前の席に座るこいつ、
倉田健もゆうちゃんファン。
ついでに言うと、私の好きな人。


「…ニブイな…なんで気付かないかな…」

「おいおい…告ってないのに気付けと?
倉田君どんだけ自信家なのよ。
相手は天下のゆうちゃんですよー?」

ゆうちゃんを見つつ嫌味たっぷりで言ってやったら
倉田君が思い切り吹き出した。


「笑うとこじゃないんだけど」

「いや、まぁ、うん」

「別にいいけどさ、ムカつく」

「どっちだよ」

目が合って、ドキッとして、すぐ反らした。


「どっちでもいいじゃん、もー」

ドキドキをごまかすたまめにため息をつくと、
ポンって顔に手をあてられた。

「!!!!!」

「ほーんと、かわいいよな、お前」

………はい?

ポカンとする私を見て倉田君は楽し気に笑ってる。


「俺、宮内見てるわけじゃないぞ」

「え?」

「何でそんな思い違いしてんのかわかんねーけど…
気にしてるお前見てると楽しくて仕方ないわ」

「ばばば…ばかにしてんの!?」

「かおまっか、すんげー面白い」

「むっむかつくー!!最低、倉田君嫌い」

「へぇー…俺は好きなのに」


倉田君の言葉に私の思考が完全に止まった。

嬉しそうにニヤついてる倉田君と、
ばかみたいにドキドキしてる私は
どうやら同じ気持ちという事らしい…けど。


「で、でもゆうちゃん見てたのは…」

「だから、見てねぇっての。
すぐ目反らすからお前が気付いてないだけで俺は、」

「じゃあ毎日何見てニヤニヤして…」

「だーかーらー、もう…まったく…
変な勘違いしてたお前だっての」


あぁ…神様…!これは現実なの…かな…


「というわけで、返事もらえるかな」

照れているのか、何とも言えない倉田君の表情と
その言葉にテンパって頷くだけしか出来なかったけど、
倉田君は嬉しそうに微笑んでくれた。


いつもと同じ休み時間がちょっとだけ楽しみになった。
いや、うそ。ものすごく、だね。




視線の先に、いつも君がいた。


end。



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