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おやすみなさい
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10.おやすみなさい



洗い物を終えて部屋に戻ると、言った通りにユーリはベッドでごろごろとくつろいでいた。

「ご苦労さん」

「ん。私もお風呂借りてきちゃうね」

眠くと面倒臭くなる前に入ってこようと、鞄から必要な物を取り出すため中を漁る。途中でユーリが後ろから抱き付いてきたけど無視して準備を進めていたら、ユーリの髪から水滴がぽたりと落ちてきた。

「着替え一組しかないから濡れたら困るんだけど」

「心配すんな。そうなったら俺の貸してやるよ」

「そうなる前に入ってくる」

「なるべく早くな」

腕が解かれたので振り返ってユーリの肩に掛かっているタオルを取って頭に乗っける。乗っけたタオルの上からぐしゃぐしゃと頭を撫でれば、跳ねた毛先から水滴が飛んできた。

「ユーリは髪の毛ちゃんと乾かしておきなよ」

「へいへい」

絶対にやらないと確信したけど、お風呂を済ませてからでも遅くはないだろうとユーリの髪を乾かすよりもお風呂に入る事を優先。余計な事を言って引き留められないようにと、疑いの視線だけを向けて黙って部屋を後にした。





なるべく早く出てきたつもりだけど、部屋に戻るとユーリはベッドの上で大の字になって寝ていた。近付いても起きる気配はなく、やっぱり髪の毛を乾かさなかったらしく枕が濡れている。

「ユーリ」

「…」

名前を呼んでも起きる気配は無く気持ちよさそうに眠っている。その寝顔をベッドに腰掛けて眺めながら髪を乾かしている内に、ふいに頭を掠める好きの言葉。慣れ合い過ぎて昔に比べてそう感じる機会は減っていたけど、こうも一緒に居る時間が増えるだけで感じる機会が増えるなんて。ま、擬似結婚生活なんてものをしたがったユーリもそれを受け入れた私も、互いを想い合っているからこそなんだろうけど。

「…恥ずかし」

駄目だ、色々と考えている内に可笑しくなってくる。こんな日はもう寝よう。

「おやすみ」

寝ているユーリの唇を盗んで、どうせ一緒に寝るつもりだったんだろうユーリの狭いベッドに身を乗せる。軋んだベッドの音にも身動き一つしないユーリをまたいで壁際に身を沈めて、広げられているユーリの腕に頭を乗せる。まだ少し髪の毛が湿っているけどいいやと瞼を下ろしたら、昼寝をしたにも関わらず途端に睡魔が襲ってきた。


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