春。
ポカポカと温かい日ざしが窓を通してプリンプ学校のとあるクラスの部屋へと入る。
黒板前ではアコール先生がくじ引き箱を作りつつ説明をしている。
席決めでの説明だ。
どうやら普通にくじ引きで席を決めるとのことらしい。
「では、きちんと列に並んでくじをひいてくださいね。」
アコール先生がニコッと笑いながら生徒全員に言う。
生徒全員がくじ箱の前に並んで次々とその席の方向に向かって荷物をずらしてすわっていく。
ここ、プリンプ学校では二個の机とイスがセットになっている。
「あ、あたしは〜…窓の隣の席かァ。やった!」
あかぷよ帽をかぶった少女が軽くジャンプしながらくじの番号と黒板の番号を見合せながら言う。
荷物を持ちながらアミティが席のほうへと向かうとオッドアイの少年が先に席に座って寝ていた。
「あ、シグか〜。もう寝ちゃってるよー。」
すると、シグも軽く目をこすりながらゆっくりと起きた。
「ん〜アミティ〜?」
そう言ってまたシグは机の上で寝てしまった。
数分たって大体皆が決まった席についたのでアコール先生んがぷよの授業をしようとしていた。
(なんかシグ見てたらあたしも眠くなってきたな〜…。)
そのままアミティはシグの隣で自分も寝てしまった。
ずり、とその時あかぷよ帽もとれてしまった。
「それでは授業を始めま…あら?」
窓方面の席で一番前の二人が寝ているのをアコール先生は見逃すわけなかった。
カツカツと靴の音をならしながら傍らにはハリセンを持ってる先生が二人の前にいた。
バシッとしてはいけない体罰らしき音が教室中に響いた。
―帰り道
「あたた…今日は散々だったね…。」
あかぷよ帽を外しながら少し頭をさすりながらアミティが言う。
「えーそう?」
シグがキョトンとした感じに言う。
「え?何で?補習もしたしハリセンでたたかれていたいのに…あいたたた。」
すると、アミティの左手をシグが右手でギュッと握る。
「今日はアミティいたから。」
「え?あたし?」
そうアミティが言うとシグはコクンと頷いてしばらく黙ってしまった。
「あ、あたしの家だ。じゃ、じゃあね!シグ!」
アミティが少し照れながら家の玄関前に行く。
「っと…あれ……?鍵…しまってるなぁ。」
アミティがドアを押したり引いたりするがびくともしない。
アミティはいつも鍵は持ってないらしい。
「…アミティ、親来るまでうちくる?」
家の下らへんでシグがぽや〜という。
「え、え!?そんな悪いよ!ここでお母さん来るまで待ってるよー。」
すると、シグがコンクリートの階段をつたつたと上りアミティの右手をギュッとつかむ。
「もうそろそろ日が暮れるからうち、来なよ。」
よく見れば空は夕焼けにそまってもう日が落ちる寸前だった。
「う、うん…。」
そのままシグの家へと着いた時にはもう日が暮れていた。
シグが家のドアに手をかける。
「おかーさーん。ただーまー。家の鍵しまってたからアミティ連れてきたー。」
すると、しばらく会話が聞こえてシグが二階いこ、とそっけない言葉を言い、玄関からそのまま近くの階段へと歩いて行く。
その間にアミティはこっそりとおじゃまします、という。
「あ、あれ?シグーシグの部屋ってどこ?」
必ず言ったことのない家にいくと絶対にこうなる。
「こっち。」
そうシグが赤い左手で指さす。
とことこと廊下を二人が部屋に向かって歩く。
「へ〜ここがシグの部屋なんだ〜。」
そこには虫カゴが何個も飾ってあり虫のポスターなどもはってあるいかにも普通の男の子の部屋であった。
「アミティ、ベッドらへんに座ってて。」
うん、とアミティは言ってベッドらへんにポフッと座り、ぷよぷよ型の携帯を開くと一件のメールが来てた。
母親からであった。
゛今日はお父さんもお母さんも外国でお仕事があるからアミティ今日はシグくんの家に泊って行ってね。お母さんからさっき電話で言っといたからね。明日には帰れるから。じゃあね。゛
「―え?あ、ふぁい?」
ぷよぷよ携帯をポカンと見つめながらアミティは少し硬直する。
「…どうしたのアミティ?」
シグが少し心配そうなオッドアイの目でアミティを見つめながら言う。
「え、あ、いや…。お母さんが今日はシグの家で…泊ってって。」
そのあとに数十秒だけ沈黙が走る。
「ねーアミティ。」
机の椅子に座ってるシグが言う。
「え?何?」
トンッとイスから降りてアミティのいるベッドのほうにシグが歩いてく。
「ちょっと前髪にゴミついてるから目ぇつぶって。」
そうシグが言うのでアミティはそのまま目をつぶった。
その時なんか変だなと違和感を感じてアミティは目を開けた。
なんか唇の前でシグが近づけてる時であった。
「――え、ぁ?シグぅ!?」
さすがにここまでくると驚くのもムリはない。
「…失敗。アミティ目ぇつぶっててってさっき言ったじゃん。」
突然のことでアミティはえ?え?しか言葉がでない。
シグが軽くアミティのことをベッドのほうに押す。
「え?」
だんだんシグが近くに来る。
「え、え?ちょっと待って!失敗ってなにが」
そのままシグがアミティの口のところに舌をからませる。
その瞬間アミティは本当に驚いた顔をしていた。
「…。」
また、少しだけ沈黙が走った。
そのあとにどれだけの時間がたったであろうか。
気付いた時はすでに夜中の二時になっていた。
どうやらアミティはあれで気絶していたみたいだ。
そりゃあ春であっても夜は寒いことだってある。
だから夜中なんかは少し涼しいはず。
だけど、なぜ今は寒くないのか?
そうアミティは心で思っていた。
暗いからよく見えないようだ。
(なんかうえらへんあったかい…モフモフしてる…。)
明らかに布団であった。
青色の布団…誰かを連想しそうであった。
まさかと思い右向きになっていた身体を左に動かしみてみた。
青髪の少年がすやすやと寝てた。
これにてアミティの体温が3度近く上がったようだ。