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□抱擁。
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「駄目だよ二人とも!勝手に出て行っちゃ……なんて言いたいところだけど、僕も中央庁は嫌いだし、今回は許すよ。でもこれから外出するときは僕の許可を取ってくれると嬉しいな。中央庁の人間には上手くいって言っておくから安心して出かけるといいよ」
「有難うございます、コムイさん」
あの後リンクにこっぴどく叱られて指令室に向かったら、コムイさんが思いもよらぬ言葉をかけてくれたから安心した。
「アレン君は明日から任務だし、この後はゆっくり休むといいよ。あ、あと神田君、今日は手出しちゃだめだよ?」
「はい。おやすみなさい」
「誰が出すか馬鹿!」
そういう神田もさっきのコムイさんの言葉に安心したのか、暴力は振るわなかった。
「今日は有難うございました。すごく楽しかったです」
「ああ……」
「やだなー……部屋に帰ったら書類が待ってるんですもん!だから今日本当に楽しかったんですよ?感謝してます」
「モヤシ」
「何ですか?」
「独りであんまり抱え込むなよ」
後ろを歩いていた神田から、不意に抱きしめられた。
「え……?」
「いや……何でもない。じゃあな」
「かん……あの、えと……」
僕のを抱きしめていた腕がするりとほどける。
そのまま彼は歩いて行った。
「……初めてだ、抱きしめられたの」
僕は、しばらくそこに立ち尽くしていた。
「ただいま、リンク」
「遅かったですねウォーカー。何をしていたんですか?」
「なんでもないですよー」
「……?とりあえず書類を書いてください。話はそれからです」
「はいはい。明日から任務だし、頑張らないと。ねー、ティム!」
「……?(何が遭ったんだ……?)」
僕の肩には、まだ彼から抱きしめられたぬくもりが残っていた―……
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