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□抱擁。
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そのまま街を歩いた。






手をつなぐまでは進展したけれど、それ以上は行っていない。






キスも……抱きしめるのも、まだ。


普通の恋人はキスしてるし、抱き合うなんて普通の事。







『普通』












それはずっと僕が否定されてきた言葉だった。
























「……ねぇ神田、普通って何?」









だから僕は思わず聞いてみたくなった。



僕が立ち止まると、神田も立ち止る。







さっき喉につかえて言えなかった言葉。



あれは僕自身が普通じゃないと思ったからなのかも知れない。






こんなこと聞いたら、変だと思われる。







そう理解してたから。















大切な人にだけは、変だと思われたくなくて―……













「馬鹿」



後頭部に手を置かれ、無理やり上を向かせられた。






「普通が何かなんて、それは個人の判断だろ。お前の腕や髪を何だと言われようがお前がどう思ってようが、俺はこの腕や髪が変だとは思ってない」




不思議だ。












この人に言われるだけで、僕はこんなにも安心できるんだ。















「そっか……そうだよね、有難う、神田」













ふわり、と笑顔を浮かべる。







風が僕らの間を通り抜けた。











「そろそろ暗くなる。帰るぞ」




「……はい」
















大きな彼の手に引かれて、僕は教団へと向かった。
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