過去を繋ぐ物語
□日進月歩
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何故だかわからなかった。
初めて会ったはずなのに。
まともに会話したのも初めてなのに。
(なんでこんなにも、初めて会った気がしないんだ?)
よく分からない感情が溢れてくる。
(佐助さんがフレンドリーに話してくれたからか?)
学校の帰り道いろいろと思案をしながら帰る。
俺は人と話すのがあまり得意ではない。
特に初めて会った人なのど、もっての外で。
ああいった状況で知り合いになり、普通に話すようになるなんて今まで生きてきた中でまずなかった。
はぁ、と短くため息を吐いて、ふと前に視線を向けた。
その時だった。
(あ、佐助さん……)
橙色の髪の毛を見つけた。
手には荷物を持っている。
俺は自然と早足になる。
「佐助さん」
「あぁ、葵ちゃん」
近づいて名前を呼んだ。
すると、俺だと気付いてくれたのかニッコリと笑ってくれる。
「学校帰り?」
「…はい」
「そっか、今日もお疲れ様」
(佐助さんは……優しい、な)
会って間もない人物に、ここまで接してくれるのだから。なぜだか、胸が苦しくなった。