紅獅子 物語

□擦違いからの脱出
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2人が口論してから2週間が過ぎた。あれ以来、ゴドリックはサラザールに会っていない。食事の際でも、2人は会うことは無かった。サラザールは薬草を取りに出かけ、夜遅くに帰ってくるか、部屋に篭り、魔法薬の研究をしているか、または仕事で数日居ないかである。どれも、ゴドリックが談話室やリビングに居ない、部屋に居るか、素振りのために外に居るか、入浴しているか、つまり、会わないような時間に食事やその準備をしているらしい。ゴドリックもそれに気づいているがあの事があった為にどう接して良いのか、分からなくなっていたので彼にとっても好都合だった


「・・・今日で14日、か」


ゴドリックは1人、いつもの暖炉前のソファで横になりながら呟いた


「このままじゃいけない・・・それは分かってる。でも、どう言ったら良いんだ。それに、どうして、サラザールは」
(俺を・・・閉じ込めようとするんだ?単に今回のことだけじゃないのか?)


そんな事を考えていると玄関の扉をノックする音が聞こえた。行くとそこにはゼロス・フェルバジルナークが立っていた


「よっ」

「・・・フェルバジルナーク?」

「・・・スリザリンは?」

「・・・・・・居ない」

「・・・そうか。で、オマエらは何かあったのか?」

「え?」

「あったんだろ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・あぁ」


暖炉の前で例の事について話すゴドリック。ゼロスはそれを黙って聞いていた。話し終わり、ゴドリックが彼を見ると「まったく、あの馬鹿は」と呟いて頭を掻いていた


「なぁ、オマエは何でスリザリンがそんな事したのか、分かってる?」

「?分かるわけ無いだろッ」

「だろうな。じゃあ、何でアイツがオマエを手元に置いているのかは?」

「・・・・・・今回の事件でまた俺が捕まらないように」

「・・・それだけ?」

「違うのか?」

「・・・いや、まぁ・・・オマエな。それ、口実だから;;」
(コイツ、好意ていうか恋愛に疎いんだろうなぁ)

「口実?」

「スリザリンは・・・まぁ、アイツの親父もそうだったみてぇだけど、人と一緒に居るのを極力避ける。だから、これだけ広い邸でも、人間はアイツ1人で他は蛇だ」

「?どうして?」

「あの容姿だから。俺達の中でも俺やイグノタスかユエくらいだ。アイツに職務以外で話しかける奴はな。恐ろしく思えるのさ。最も強い魔力を宿す瞳の中で、紅の瞳は結構、稀だし、何より、紅の瞳は悪魔とか死神とか、そんな連中を連想させるからな」

「・・・」

「それに、アイツが名前で呼ぶところなんて、俺は初めて見た」

「え?」

「フルネームで呼んでるだろ?スリザリンは。オマエは違うみたいだけどな」

「俺だって、前は」

「・・だが、それが変わった」


ゼロスに言われ、彼は間を置いて頷く


「アイツも、アイツの親父も独占欲が強過ぎるってぇことだ」

「は?独占欲?」

「好きでもねぇ奴をアイツが手元に置いておくなんて有り得ないって言ってんだよ」

「す、好きって」

「気に入られてるってことだ。アイツが他者を気に入るなんて本人でさえ初めてのことなんだろう。今のオマエと同じだ、グリフィンドール。どうして良いか、分からない」

「・・・・・・」

「自分の物を気に入るのは簡単だ。自分の思い通りだからな。だが、他人は違う。自分と違う価値観、思考、夢、願い。だから、思い通りにいかない。だから、苛立つ。アイツにとっては他人と話しているオマエを見るのさえ嫌で、閉じ込めておきたいくらい大切ってことなんだろうな。ま、空回りしてるみたいだけど」

「・・・大切?俺が?」

「でなきゃ、そんなに世話やいてねぇって。あの蛇が;;」

「・・・・・・邪魔者、とかじゃないのか?1人で住んでるし、俺が来たから手間かけてるし」

「言っとくけどな。アイツが邪魔者だって思ってたら、即、死の呪文で殺されてるか、蛇に食わせてると思うぞ;;」

「え?!」


「いや、マジだから」とゼロスは苦笑した


「ていうか、オマエ、マジで気づかなかったわけ?傍から見ると、暑苦しいくらい執着してるぜ」

「・・・俺、てっきり・・」
(邪魔で余計な手間を取らせてるからだとばかり)

「・・・・・・」

「あ、謝らなきゃ。俺、アイツに」
(酷い事言った)

「・・・その必要ないと思うけどなぁ」

「いや、謝らないと。俺、酷いこと言ったんだ。だから、謝らないと」

「・・・ま、頑張れ;;」
(アイツの方が悪いと思うんだけどなぁ;;)


ゼロスが去ってからゴドリックは考えていた。会うことがまったく無いサラザールにどう謝るべきか
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