紅獅子 物語
□微笑ましき平和な日常
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ホグワーツ魔法魔術学校。ガイリオスを校長に迎えて始まった偉大な魔法使いと魔女により築かれた学校。組み分け帽子を創り上げて、数年。開校された学校。入学式を終えた今日。夜にゴドリックは、廊下をツカツカと怒りを含みながらある場所に向かって歩いていた。苛々しているのは、歩く音からも明らかで彼は、自分の寮とは反対の地下へ行き、目的地の扉をノックもしないまま、乱暴に開けた
「どういうことだ!サラザール!!!」
バンッと開けて、そう叫ぶが背を向けていた中の人物はゆっくりとさして驚いた素振りも無く振り返った。そんな彼にゴドリックはさらに怒りを強める
「どうとは?」
「今日の、組み分けだ。純血家系の生徒のみオマエの処じゃないか!」
「・・・純血の者はオマエの寮にも、ヘルガやロウェナの寮にも数人居るではないか」
「・・・あぁ。確かに居る。だが、そいつらは、家系自体がマグルを認めてるところばかりだ。だが、オマエのところはどうだ?!オマエのところは全員、純血家系でしかも、マグルを忌み嫌い滅ぼすべきだと考えるような純血主義の家系ばかりじゃないか!」
「組み分け帽子がそう分けたのだ」
「あぁ。だが、そうなるようにしたのはオマエだろう!?サラザール!!」
「・・・」
「オマエ、言ったな。マグル出身者と純血主義者達は、分けるべきだと」
「あぁ。学校自体を別にすべきだと言った。だが、オマエ達はそれを拒んだではないか」
「・・・だからか?だから、寮で分けたのか!どうしてッ!!」
「・・・ならば、ゴドリック・グリフィンドール。オマエに問おう。魔女狩りが存在し、マグルを滅するべきだと考える家系の者とそのマグルを親にもつ者。同じ場、同じ寮で何も起きないと言えるか?2者の違いは出身だけではない。マグル出身者は魔法というものを知らん。物を浮かせる初期の魔法すら使えん。だが、純血の者は、いや、魔法族を親に持つ者は少なからず魔法を教わっているのだ。それが何を意味するか、分かるか?」
「何をって・・」
「下手をすれば、マグル出身者は殺されるのだぞ」
「ッ!?」
「盾呪文すら使えぬ、しかも、我等が居る場ならともかく、寮まで見きれるものではない。ならば、寮を分けるしかなかろう?違うか?ゴドリック・グリフィンドール」
「ッ・・・だけど」
「例え、オマエやロウェナ達の望む資質があろうと、マグルを劣等と考える者達ならば、我の寮とするようにしてある。我が寮が求めるは、狡猾、そして、野望、野心」
「なっ?!・・・オマエは、俺が巻き込んだようなものなのに、どうしてッオマエばかりッ!俺はっ」
サラザールは顔を歪め、俯くゴドリックに近づき、彼の腕を取り引き寄せ抱きしめる。驚く彼が顔を上げれば、何か言う前にサラザールによって唇を塞がれた
「サラ・・んっ?!んんっ・・・ん、ふっ・・・んぁっ・・・ッ、は、ぁッ」
舌を這わせ、深く口付ける。唇を離せば、少し色気づいた顔で、ゴドリックは荒く呼吸している
「はぁ・・・・サラ、ザール」
「・・・貴様は、何も気にしなくて良い。ただ、笑っていろ」
「だっ・・俺、は・・」
「・・まだ言うか」
「んっ!?・・・んっぁっ・・・んぅっ・・ん」
1度、唇を離し、サラザールは傍にあった試験管の蓋を開け、中身を口に含むと再び彼に口付けて、舌で彼の口をこじ開け、中身を流し込む
「んっ・・んぁっ・・・!?ん゛ッ・・んふっ・・・んぐっ」
酸欠で力が入らず、ガクンッと足の力が抜けたゴドリックは顔を真上に向けてしまい、流し込まれた液体を拒むことが出来ず、彼の喉はコクコクッと鳴り、飲み込んだ。それを確認してようやく、彼を解放したサラザール。床に膝を付き、ゴホゴホッと咽るゴドリック
「ッげほっごほっ・・・さ、サラザールっ、な、にっ・・飲ませ・・・・・・」
目の前がぼやけ始めて、ゴドリックは意識を手放し、その場にパタッと倒れた。そんな彼を抱き上げるサラザール。すやすやと眠る子どものような寝顔の彼を愛しく見つめる
「ゴドリック、貴様は何も心配しなくて良い。何も抱え込まなくて良い、何も怯えなくても、恐れなくても良い。ただ、前を向き、我にその笑顔を見せてくれればそれで良い。太陽の輝きをただ、我に見せてくれれば良い。貴様が笑顔で居るのなら、我の傍に居るのなら、我は喜んで闇に身を投じよう。死が別つまで我の傍に。ゴドリック・グリフィンドール」
ギュッとサラザールは彼を抱く手に力を込めた
それから、数週間、2人は軽い口喧嘩はいつものことで、内容はいつも下らぬ事が多かった。生徒達や教師達は、最初こそ驚いていたが今では「また始まった」と溜息を吐くのみだった
「ゴドリック!貴様、我の本に何をしたのだ!!」
「何って何だよ!俺は何もしてない!!」
「嘘を吐け!久しぶりに本を開いたら蛇が飛び出してきたのだぞ!!それも大量に!」
「・・・ぁ、あれ、サラザールのだったんだ」
「やはり、貴様の仕業ではないか!馬鹿者が!!」
「なっ!?さ、サラザールだって悪いだろ!?大体、自分のだって言うんなら、自室に置いておけば良いだろ!!または、名前書いとけ!」
「そもそも、あのような下らん魔法を掛けるのは貴様くらいだろうが!!」
「俺だけとか言うな!!それに!咄嗟のハプニングくらい対処出来ないとダメだろう!だから、俺は」
「あんなもの、誰でもすぐに対処など出来るか!!この馬鹿めが!!!」
ゴンッ!
「いってぇ〜!!!!」
とはいえ、内容はゴドリックがした悪戯(本人は悪戯とは思っていない)にサラザールが餌食になったことを咎めることによるものが多く、大広間で行われる場合、2割の確立で最後には、埒があかなくなったサラザールが本等でゴドリックを撃沈させて大抵の喧嘩は終了する。1割は逃げ出したゴドリックを追いかけるサラザールという状況で終了、大半は、ギャーギャー言うゴドリックをサラザールが餌で釣り、部屋に連れて行くパターンが主であった。それ故か、生徒達の間である噂が流れていた。ある日の大広間での食事。本日、サラザールは少し遅れてから来るらしく、今この場に居ない。グリフィンドール寮所属の生徒が勇気を持って、寮監であり、ホグワーツのモテ男NO.1で生徒達に大人気のゴドリックに聞いた
「あの、グリフィンドール先生」
「ん?なんだ?」
「あの・・・」
「?なんだ?遠慮せずに何でも聞いて良いぞ♪」
「それじゃあ・・・あの、グリフィンドール先生とスリザリン先生って・・付き合ってるんですか?」
「ぶふっ!?」
ゴドリックは、飲みかけた南瓜ジュースを盛大に噴いた
「げほっげほげほ・・・な、何でッ、そんなこと、き、聞くんだい?」
「いえ、喧嘩したりしてるのに、部屋に一緒に行くし、以前、魔法薬の教室で2人が抱き合ってるのを見た人も居るので」
「えっ?!ちょっと何よ、それ!そんなの初耳♪」
「何、興味津々な顔してるんだ!ヘルガ!!」
「だって、気になるじゃない!で?2人は何処までいったのよ」
「まぁ、ヘルガ。いくら、相手がゴドリックとはいえ、サラザールも其処まで手を出しませんわ」
「ていうか、俺達、付き合ってる前提なのか?!ロウェナ!!」
「それで、いったい、何処まで行ってるんだい?グリフィンドール教授」
「ガイリオス校長!!悪乗りしないでください!!」
「・・・・・・何の騒ぎだ?」
「うぇ!?さ、サラザール;;」
「?」
何処か、眠そうな感じのサラザールは不機嫌そうな顔をしている。大広間にやってきた彼にガイリオスが聞く
「スリザリン教授」
「?何か?ガイリオス・フェイルターナ校長」
「君達2人は付き合っているのかね?」
「ちょっ?!ガイリオス校長!何、聞いてるんですか!!俺達は、ただの親友ってだけで・・」
「・・・ただの親友だったのか?」
「・・・え?」
初めて知ったとばかりに言うサラザールにゴドリックは彼の方を振り返る
「さ、サラザール;;」
「ところで、何故、そんな話が出た?」
そう聞く、サラザールにガイリオスが答える
「そこの生徒が、彼に聞いたのだよ。君達は付き合っているのか、とね?まぁ、私としてもその子の話を聞いていて、確かにと思う点もあった為、今に至ると言ったところだね」
「・・そうか。ところでゴドリック。我とオマエはただの親友だったのか?」
「え?だって、親友、だろ?・・・ち、違うの?」
「貴様はそう我を見ていたのか」
「え?え、え?じゃあ、サラザールはどうなんだよ;;」
ゴドリックは、この一言を物凄く後悔する
「知りたいか?」
「え?・・ちょっと、ち、近いんじゃない;;」
至近距離までやってきたサラザールはゴドリックの腰の辺りに手を回し、抵抗しようとした彼の手をもう片方の手で掴む。まるで、恋人が抱き寄せる状況だ。さすがに焦るゴドリック
「ちょっ、さ、サラザール?!み、皆見てるんだけど;;」
「だから、なんだ?」
「な、何だって、だって・・・オマエっ・・・んっ?!」
今度は、生徒達や教師は、「きゃー」と歓声とも悲鳴ともとれる声を出した。それは、サラザールがゴドリックに口付けたから。ゴドリックは目を見開いて驚きもがくが唇を離すことも、出来ず、深く口付けされる
「ん、んぅっ・・・んっ・・・・・・・・・っはっ・・・はぁ、はぁ・・・さ、サラザールっ」
「・・・我をただの親友と言ったのだ・・・覚悟しておけ、ゴドリック」
「ッ・・さ、サラザール・・・・・・ぅわっ?!」
ヒョイッと抱き上げられ、御姫様抱っこされるゴドリックは顔を真っ赤にした
「ねぇ、サラザール」
「?なんだ、ヘルガ」
「ヘルガ!助け・・」
「やっぱり、2人は付き合ってるってこと?」
「だから、違っ」
「愚問だ。そのようなこと、聞くまでも無いだろう?」
「え?!サラザール!」
「・・・ガイリオス・フェイルターナ校長」
「何かな?スリザリン教授」
「本日の、我とゴドリックの授業、自習といたしたく思います」
「・・・ふむ、まぁ、偶には良いんじゃないか?許可しよう」
「えぇ!?ちょっ、ガイリオス校長〜!?」
「サラザール、程々にしておいてくださいな」
「ロウェナ!」
「・・ロウェナ」
ゴドリックは、助け舟とばかりに彼女を見るが
「・・・寒い時期ですから、暖かい場所でしてくださいな。風邪をひいて生徒達にうつったら大変ですわ」
「ロウェナ〜〜〜;;」
「風邪をひかせる訳が無い。そのようなことになれば、暫く触れられんだろう」
「何、言ってんだよ!2人とも〜〜!!ていうか、誰か助けろってば!!」
そう言うと、教師陣はヘルガ達も含め温かい目で「行ってらっしゃい」と手を振った
「嘘ぉ〜〜〜!?」
「黙れ、ゴドリック。さっさと行くぞ」
「ちょっ?!い、行くってッ・・・ま、待って!誤解くらい解かせて〜」
「誤解でないのだから良いだろう?」
「良くねぇよ!!」
「いい加減、黙れ。さもないと・・容赦出来ん」
「ひっ?!;;」
ビクッと身体を強張らせてゴドリックは何も言わなくなってしまった。それに満足したのかサラザールはサッサとその場を後にした。ホグワーツ内で、サラゴドという単語が広まったのは言うまでも無く、翌日ゴドリックは姿を見せず、翌々日には、ホグワーツ全生徒、全職員公認のカップルとなって、生徒達からその事に関して散々質問攻めにあい、また周囲の目も気にすることなく、アプローチを仕掛けるサラザールにゴドリックは、穴があったら入りたいと切に願うのであった
それから、ゴドリックは夜の殆どをサラザールの部屋で寝ることが多くなった。朝、彼の部屋から彼と共に出てくるゴドリックを目撃されては生徒達は、キャーキャー騒いだ
「ふわぁ〜・・・眠い〜」
「もう少し、教師らしくしたらどうだ?ゴドリック。生徒達に示しがつかん」
「誰の所為だ。だ・れ・の」
「貴様もいい加減、慣れろ」
「なっ、慣れるわけ無いじゃないか!あんなの!」
「グリフィンドール先生、スリザリン先生、おはようございます!昨日は何処までいったんですか?」
「慣れるって何ですか?」
「ッ!?」
「野暮なことを聞くものではない」
「ちょっ?!サラザール」
「えぇ〜!てことは」
「てことなのかなぁ〜」
「ッ!?・・・ぐ、グリフィンドール!50点減点!!」
「「えぇ〜」」
「・・・ついでに、そこで聞き耳を立てているスリザリン、ハッフルパフ、レイブンクロー、20点減点」
そうサラザールが言えば、ガサッと庭の草に潜んでいたハッフルパフ生、曲がり角に居た
スリザリン生、庭で本を読むふりをしていたレイブンクロー生は、「えぇ〜」と異議の声を挙げた。それを見てゴドリックは顔を真っ赤にして他の3寮から30点減点した。4つの寮が1日に減点される原因がこの2人を冷やかすが故であるのだが、それも日常となりつつあった
「サラザール〜!」
「フッ、なんだ、誘っているのか?」
「なっ!?そんな訳あるか!!」
「・・・フフフ」
「・・・・・・フッフフフ、はははっ・・・なぁ、サラザール!」
「ん?」
「・・・楽しいよな!すっごく」
「・・・・・・あぁ、そうだな」
そう言っているとゴドリックは生徒達に引っ張られて中庭に行き、ヘルガが輪になって生徒達とクルクル回っているところに行って、生徒と共に笑った。ロウェナは、傍の椅子に座り、教えを請う生徒達の相手を嬉しそうにしていた。太陽のような笑顔で笑うゴドリックを見ながら、サラザールは愛しく見つめて微笑んだ
こんな日常が長く続くことを夢見た
ずっと続くと信じていた。ずっと、彼の傍に居ると居たいと願い続けて
だが、彼の願いは叶うことが無いこと
もうタイムリミットが、永久の別れが近づいていることを
彼等はまだ、知らなかった
『微笑ましき平和な日常』
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