紅獅子 物語
□魔法の古城に父の痕跡
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「例の、マグル避けの魔法か?」
「左様にございます。馬車をご用意しております、こちらへ」
彼等の前に現れたのは、馬の居ない馬車。だが、ゴドリックにはその馬車を引く。不気味な生物が見えていた。羽の生えた骨ばった馬
「・・・これ、なんだ?この馬車を引いてる奴」
「何言ってるの?ゴドリック。何も居ないじゃない」
「いや、居るんだ。何か、羽の生えて骨ばってる生き物」
「羽の生えた?・・執事シュヴァルツ、馬車を引いているのは「セストラル」では?」
「さすが、レイブンクロー嬢。お察しの通り、城の周囲の森に住むセストラルです」
「セストラル?・・なんだ?それ」
「セストラル。天馬の一種で死を見たことがある者だけに見える爬虫類のような生き物のことですわ。とても賢く優しい生き物です」
「でも、何で俺だけ見えるんだ?」
「死を見たことのある者しか見ることが出来ない生き物なのです、グリフィンドール卿」
「・・・そう、なんだ」
そして、彼等は馬車に乗った。進む馬車の中でゴドリックは1つ提案をした
「なぁ、これ、学校でも使えないかな?生徒達の出迎えとかにさ♪」
「良いですわね。魔法学校なのですし、魔法が多く取り入れられてなければ意味がありませんわ」
「そうよねぇ、それに魔法生物と接する機会もなくちゃねぇ」
「サラザールは?」
「我も賛成だ」
「んじゃ、決まりだ♪」
「・・・・・・」
「?ゼロス・フェルバジルナーク、どうかしたか?」
「ん、あぁ。あのシュヴァルツって奴が気になってな」
「?」
「フェルバジルナーク、どうしたんだ?別にアイツ、変な感じしなかったぜ」
「・・・そうじゃねぇよ」
「?じゃあ、何だ?」
「・・・」
(あの魔力・・妖精の、いや、エルフと似た魔力・・・まさか)
馬車が止まる。シュヴァルツが「着きました」と言うので外に出ると其処には、大きな魔力の宿る古城。その重い門が開かれる
「ようこそ、ガイリオス公爵様の魔法の古城へ」
「・・・ガイリオス公爵様。じゃなくて、『私の』、じゃないのか?」
ゼロスの言葉に案内しようと彼等に背を向けたシュヴァルツがピタッと動きを止める。ゴドリック達は「えっ?」と首を傾げてゼロスを見た
「何のことでしょうか?フェルバジルナーク様。私は」
「俺達、フェルバジルナークとフェルレオナークは魔力で人を見ることが出来る。オマエからは、エルフに似た魔力、あと、隠していても、分かる。この城に施された魔法の魔力と同じ波動の魔力がオマエから出てる。俺達を試そうと思ったのか?ガイリオス・フェイルターナ=ホグワーツ。ハーフエルフよ」
「え?ハーフ、エルフ?ってなんだ?」
ゴドリックの一言に緊迫していた雰囲気が吹っ飛んだ
「ゴドリック、あんたねぇ、何処まで無知なのよ;;」
「仕方ないだろう、ヘルガ。知らないものは知らないんだから」
「ゴドリック、エルフは知っていますね」
「あぁ」
「ハーフエルフとはエルフと人間の間に生まれた者のことですわ」
「へぇ〜」
「ハーフエルフは、エルフと同様に魔法族よりも長寿だ。魔法も使用できるとなると、おそらく、エルフと魔法族の間に生まれたということだろう」
「で?正解か?執事殿」
「・・・・・・フッ、さすがは、神の眷属として名高いフェルバジルナーク。こんなに早くばれてしまうとは」
「じゃあ」
振り返る時に彼の服は変わった。純白の公爵の格好に長めのマントを羽織った姿になる
「そう。私が城主ガイリオス・フェイルターナ=ホグワーツ。300年、この城に住むハーフエルフ」
ゼロスは、「城に着いたから、帰る」と言って去って行った。4人は、ガイリオスの案内で城を歩いていた。すると、其処に薄っすらとした人物が現れた
【ガイリオス公爵?】
「やぁ、シーナ。お散歩かな?」
【お客様ですか?】
「あぁ」
【クスクス、貴方が此処に人を呼ぶなんて珍しいですわね。新しい城主候補かしら?】
「あぁ。そうだよ」
【まぁまぁ、ようやく決まったということですかぁ。今後が楽しみですわ♪】
去る彼女に手を軽く振るガイリオス
「・・・今の、ゴースト?」
「あぁ。此処は、ゴーストの住まう城。心配しなくても良い。皆、気の良い者達だ。それに殴られたところで相手はゴースト。問題はないよ」
「へぇ〜」
大広間に案内された彼等は、傍の長机に座る。ガイリオスがパンパンッと手を叩けば、机にティーセットとお菓子が現れた
「!?スッゲェ!どんな仕掛けなんだ?!」
「クスクス、下に屋敷しもべ達の居る厨房がある。そこから来ているんだよ」
「へぇ〜」
「君は、不死鳥と同じ反応をするね」
「え?不死鳥って、父さんのことですか?」
「そうさ。彼は結構来たからね。そこの彼の父親と一緒に」
「父上も、ですか?」
「あぁ。君達はそっくりだ」
「そう、ですか?」
「あぁ。どれだけ似ているか。何れ分かるよ。さて、本題に入ろうか。君達は、此処をどうしたい?」
「・・・俺達は、学校を築きたいんです。魔法学校を」
「・・成る程。エクシアからある程度は聞いていたが、確かに、この城ならば、1000人以上は生活することも出来るだろうし、学びに必要な部屋もある。少し離れた処には闘技場もある。危険な箇所もあるが、問題ないだろう。構わないよ、君達の自由に使いなさい」
「本当ですか!?」
「あぁ。この城に住む生きた者は私だけだ。そろそろ、小さな場所で住みたいと思っていたんだが、此処をどうしようか困っていたからね。君達なら、この城を有効に使ってくれるだろう?」
「あ、ありがとうございます!ガイリオス公爵♪」
「クスクス、いや、礼には及ばない。さて、これから色々とすることもあるだろう。だが、これから城を案内すると遅くなるだろう。今日は此処に泊まっていきなさい。それにこれからは暫く此処に泊まるのだろう?」
「確かに、泊まらねば、開校する為の準備をしなければならないからな。住めば、何処が改良が必要かも分かるだろう」
「じゃあ、案内とかはまた明日にしたら?これだけ広いから1日じゃ回りきれないし、1度戻って、荷物まとめてからにしましょうよ」
「そうですわね。では、午後、1度戻り、2日後、また来ることにしましょう」
「・・・俺は、特に何かあるわけじゃないしなぁ〜。剣も杖もあるし」
「ならば、貴様は一足早く此処に住めば良いではないか?貴様が我が邸で使っていた物は、我がまとめて持ってくる」
「え?」
「私は構わない。部屋は多く存在しているしね」
「ん〜、じゃ、そうしようかなぁ〜♪先に色々、見るのも良いし、何より、こういうところだ。きっと抜け道とかいっぱいあるんだろう♪探検してみたい♪」
「・・・はぁ、子どもだな」
「子どもね」
「子どもですわ」
「・・・・・・おい」
4人の遣り取りにガイリオスはクスクスと笑ったのだった。3人が帰った後、ゴドリックはある場所で上を見上げていた
「・・・・・・凄い;;」
彼の見ているのは階段の集まった場所。その階段は、不規則に動いていた
「はぁ〜、凄いなぁ〜。階段が動いてる」
ゴドリックは上を向きながら、階段を上り始めると横から声が聞こえた
【上ばかり向いていると階段踏み外しますよ】
「え?」
声のした方をみると壁に掛かった絵画の青年がゴドリックを見ている
「・・・え、絵がしゃ、喋った?!」
【何を驚いてるんだか。此処にある絵画は皆、魔法の絵画。喋るさ】
「へぇ〜」
【まぁ、僕は、中でも特別〜だけどねぇ〜】
「特別って、何で?」
【僕、ゴーストで絵画だから。つまり、僕の住処が此処ってこと】
「・・・てことは、他の絵画と違って、オマエは絵画の中を移動できるし、ゴーストみたいに城の中を移動できるって事?」
【そういうこと〜、だけど、絵画の中を移動できるのは僕だけじゃないよ。僕の名は、ラルフ。よろしく。不死鳥の子、紅獅子のゴドリック・グリフィンドール】
「え?どうして、俺の名前」
【知ってるさ。僕を此処に寄越したのは君のお父さんだからね】
「え?父さんが」
【そうだよ。それで、上るんなら上向いたままだと危険だよ。ここの階段は動くから】
「ところで、何で階段が動くんだ;;」
【公爵は、300年居るからね。彼の趣味っていうか、気まぐれでだね。大広間の天上もだよ。今度、公爵に見せてもらうと良い。今は、見えないようにしてあるから】
「へぇ〜、そうなのか。じゃあ、今度、見せてもらうよ」
「・・・何をしているんだね?」
「あ、ガイリオス公爵」
【やぁ、公爵。鳥の子獅子と話してたんだよ】
「鳥の子獅子って;;」
「クスクス、君を連れてきたのは、彼だったね」
【そうそう。もっと優しく運んで欲しかったけどね】
「クス・・ところでグリフィンドール。明日、ダイアゴン横丁に行くが君も来るかね?」
「え?ダイアゴン横丁へ、ですか?」
「行ったことは?」
「サラザールと1度」
「そうか。では、明日行こうか」
「でも、何故、明日なんですか?」
【偶々だよ。公爵はね、月に1度出掛けるんだよ。最近のことだけどね。最近って言っても、此処5年くらい前からか】
「その前は?」
「人付き合いはあまり好きではなくてね。1年に1度出れば良いほうだったかな?」
「マジ?」
【マジだよ】
「10年位前に君の父親が来てから、騒がしくなったけどね」
「え?」
【あぁ〜、つまりね。偶然、不死鳥が此処を見つけてから、ほぼ週に1度は来るようになったんだよ】
「あぁ。鬱陶しいくらいにね♪」
「・・・・・・;;」
「拒否すれば、引きずられて付き合わされたものだよ」
【ホントにねぇ〜】
「・・・あ、あはは・・・・・・何か、ごめんなさい;;」
「というわけで、せっかくだから、今度は、付き合わせようと思ってね」
「・・・・・・公爵、それって、八つ当たりってやつ?」
「・・・・・・そうとも言うね」
「・・・・・・・・・父さんの馬鹿;;」
ゴドリックは、もう亡くなった父親を少し恨んで溜息を吐いた。夕飯のときに、大広間の天上を見せてもらい、今は、昔、彼の父が泊まっていたらしい太った貴婦人の絵画が扉となっている部屋の談話室でゴドリックはソファに寝転がっていた。階段を上れば左右に部屋があり好きに使って良いという
「・・・父さんも、使ってた部屋」
ゴドリックは入った瞬間、懐かしいと感じた
「・・・此処、家の談話室に、似てる」
ガイリオスの話では此処は、彼が来た時に勝手に模様替えされたらしい
「・・・此処、寮とかにしたら、良いなぁ〜・・・なんだろ、何か、暖かい」
ゴドリックは瞳を閉じた。翌日、談話室の絵画達に起こされて目を覚まして、彼は大広間に来た。ガイリオスは既にコーヒーを飲んで朝食を食べていた
「おはよう」
「おはようございます、公爵」
「よく眠れたかな?」
「何か、懐かしくてぐっすり」
「あぁ。あそこは彼が模様替えしたからね。事後承諾だったけど、別に私しか居ないし、彼は良く来ては、強制的に泊まっていったものだ」
「ありがとうございます、公爵」
「何をかな?」
「あそこに行って、俺、久しぶりに父さんに会えた気がしました。凄く、懐かしかった。だから、俺にあそこを進めてくれたんですよね?だから、ありがとうございました」
「・・・君は」
ガイリオスはゴドリックの頬に触れる。彼は首を傾げて彼を見る
「んっ・・・?」
「フッ、君は、本当に彼と瓜二つだ」
「?・・・そう、ですか?」
「あぁ。さて、朝食を食べなさい。それが済んだら、ダイアゴン横丁とホグズミートに行こう」
「はいっ♪」
ゴドリックは元気に答えて、ガイリオスはクスッと笑った。ダイアゴン横丁では、ゴドリックは着せ替え人形のように服をとっかえひっかえ着せられ、ついでに買ってもらったが、それから、ホグズミートに行き、菓子を買ったりして帰って来たわけだが、ガイリオスは楽しそうに帰って来たがゴドリックはグッタリしていたのだった。それを見たラルフは
【不死鳥への八つ当たりが子獅子ちゃんに思いっきりいっちゃったみたいだね。でも・・】
ある意味では、親子みたいに見える
『魔法の古城に父の痕跡』
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