紅獅子 物語
□希望と擦違い
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彼が此処に居るのは、今回、彼を利用しようとしていた組織の黒幕が見つかっていないから。そんな状況で1人にしてまた捕まっては困るから。そんな理由だと彼は思っていた。その時、玄関をノックする音が聞こえた
「?はぁ〜い」
ゴドリックが出ると前にいたのはイグノタスだ
「あ、イグノタス」
「・・・スリザリンは居ないのか?」
「え、あ、あぁ。薬草が足りなくなったって」
「・・・森に行ったというわけか」
「うん」
「・・・まったく、相変わらず魔法薬にのめり込んでいるのか」
「え?」
「あの男の趣味は魔法薬の研究。月蛇の親、黄昏の蛇もそうだったからな」
「?つきへび?・・・たそがれの、へび?」
「あの男のことだ。我らの間では、サラザール・スリザリンのことをそう呼んでいる。オマエの父親が不死鳥の騎士と呼ばれていたように」
「ぁ、別名っていうか、異名ってやつ?」
「そうなる」
「父さんは、普通に不死鳥の騎士だったのか?」
「いや、フラウ・グリフィンドールは、紅蓮の不死鳥」
「紅蓮の、不死鳥?」
「そうだ。そして、あの男の父親が黄昏の蛇」
「・・・なんで、黄昏?」
「あの父親の名が、ラグナザール・スリザリンだった故だ」
「あ、ラグナザール、ラグナロクで黄昏か」
「あぁ」
「じゃあ、サラザールは?」
「あの男はあの容姿からだ。あの男は月を思い起こさせるだろう?」
「あ、なるほど」
「故に「つきへび」、月の蛇と呼ばれている。まぁ、または、深緑の蛇とも言われるが」
「へぇ〜・・・なぁ、イグノタスは何て呼ばれてるんだ?」
「・・・紫光の、大鹿」
「・・・・・・鹿?」
「あぁ・・・ゼロスやレオスは俺の魔力が鹿であると言った。その証拠に俺の守護霊は雄の大鹿だ」
「・・・守護霊って」
「・・・エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)」
そういうとイグノタスの傍に青白い光の大きな角の生えた雄鹿が現れて、彼に擦り寄っている
「・・・あ、父さんから教わったことがある。えっと、吸魂鬼が来た時の撃退法」
「・・・それだけではないが、確かに主立って有効なのはそうなのだろうな」
「・・・魔力で変わるのか?人によってかと思ったけど」
「・・・そうだな。魔力も人それぞれだが、守護霊では同じ者も居るだろう。親子であれば、似ることもある」
「ふぅ〜ん、父さんはなんだったんだろう」
「・・・さぁな」
「イグノタスは会ったこと無いのか?父さんに」
「無い。だが、ゼロスやレオスは知っているはずだ」
「そっか。あ、なぁ、ゼロスや・・・えっと」
「レオス。レオス・フェルレオナーク」
「あ、フェルレオナークなんだ。そう、そいつらは何て呼ばれてるんだ?」
「ゼロスは、漆黒のウロボロス。レオスは白銀の翼獅子」
「?ウロボロスって時の蛇、だよな。翼獅子って?」
「翼の生えた獅子」
「へぇ〜」
「・・・」
「ぁ、なぁ」
「?なんだ」
「前にサラザールが、死がどうとか言ってたけど、どういう意味なんだ?」
「・・・俺は三兄弟の末弟。俺達、三兄弟は嘗て、死に会ったことがある」
「?死に会ったって・・死神って奴か?」
「そうだな。その死は俺達が死なずに川を渡ることに対して、褒美をくれると言った。1番上の兄は、死に最強の杖を貰いうけ、2番目の兄は死より、死者を甦らせるという石を授かった」
「・・・イグノタスは何を貰ったんだ?」
ゴドリックからそう聞かれ、彼は何処からとも無く、マントを取り出した
「マント?」
「只のマントではない。俺は死から逃れる為、透明マントを貰い受けた」
「へぇ〜、凄いな♪あ、俺はな、小鬼のラグヌックから小鬼製の剣を貰ったんだ♪」
そういって、ゴドリックは自分の剣を見せる。貰い物を見せあいっこしている子どものようだ、とイグノタスは彼を見ながら思った
「・・・」
「あ、俺は何て呼ばれるんだろう」
「・・・オマエは既に呼ばれている」
「え?何て?」
「・・・太陽の獅子」
「え?太陽?俺が?何処が?」
「・・・分からんのなら、良い」
「なっ!?それ、馬鹿にしてないか」
「していない」
「・・・そっか」
「あとは、紅の獅子、か」
「ん〜、太陽の獅子っていわれるよりはそっちの方が良いなぁ〜、太陽なんてなんか大それてる気がする;;」
「だろうな」
「・・・・・・・・・何をしている、イグノタス・ペベレル」
談話室の扉を見れば、サラザールが不機嫌な顔で立っていた
「ゼロスからの伝言だ。「近々、奴らのアジトを叩く。同行しろ」とのことだ。詳細な日時と場所は追って伝える」
「・・・分かった。用件が済んだのならさっさと去れ」
「ちょ、サラザール」
「貴様に言われるまでも無い」
イグノタスはサラザールの隣を通り過ぎようと歩き出した。彼と擦違う瞬間、彼にしか聞こえない声で呟いた
「あれは、檻の中に居る獅子ではない。閉じ込めようとすれば、牙を向く」
イグノタスは透明マントを羽織、彼の家から去って行った。ゴドリックはサラザールの言動が理解できなかった
「・・・なんで、あんな風に言うんだよ。別に何かしたわけでもないのに」
「何かしたわけではない?いや、そうではない」
「何が?勝手に上がりこんだからとか言うなよ。俺が入れたんだし」
「・・・そうではない」
「だったら・・・い゛ッ!?」
急にサラザールにきつく手首を掴まれてゴドリックは顔を歪めた。彼を見て、ゴドリックはビクッと震えた
「ッ・・・ぁ」
「・・・何もしていないわけではない。貴様と話をしていた」
「ッ、そ、それが何だって言うんだ」
「その瞳に、他者を映すなど」
「なっ!?だ、誰と居ようが俺の勝手だ。そこまでオマエに縛られる筋合いは無い!」
「なんだと」
グイッと彼の身体を引き寄せて、彼が何か言う前にその唇を塞いだ
「ンッ!?・・ん゛っ・・っふ・・・んん゛っ・・ぅっ・・・ふぁっ・・・ッ」
「貴様は、我にあのような顔はしない」
「ッ・・・サラ、ザールっ」
「何故だ。イグノタス・ペベレルと話す時、何故、貴様はあのような顔をする?あのような、輝いた顔をする?何故だ」
「ッ・・・そ、それはッ・・・俺が・・・・・・俺、が」
「・・・」
「ッ、お、オマエには関係の無いことだろ!今回のことが終わるまで、居るってだけで」
「・・・ゴドリック」
「ッ、俺はオマエにとっては、どうでも良いんだろ!?今回のことでまた俺が捕まったら、面倒なだけでッ」
「ッ!」
「い゛ッ!?」
サラザールはゴドリックの胸倉を掴み、苛立ちから壁に押し付けた
「貴様ッ」
「ッ・・・閉じ込められるなんて、俺は嫌だ!俺はオマエの人形じゃない!!」
「ゴドリック!」
彼の手を払い除けて、ゴドリックは階段を上がり、自分に宛がわれている部屋へ入り、扉の鍵を閉めた
「ッ・・・ふっ・・・ぅ」
ゴドリックは荒い息を整えながら、彼が掴んだ手首を掴み、扉に背を向けて座り込んだ。サラザールは談話室で払われた手を見つめながら立ち尽くしたのであった
『2章 希望と擦違い』
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