遊戯王夢

【不動遊星の場合】
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今日は遊星と二人で買い出しに来ていた。
いつもだったら買い出しは私とクロウで行くんだけど今クロウは腕を怪我してるし、
かといってジャックやブルーノに買いに行かせたら、お金がカップラーメンとかD・ホイールの部品になっちゃう!
……という事で仕方なく一人で行こうとしていた私に、遊星が「俺も付き合おう」と言ってくれて今日一日買い出しに付き合ってもらったのだった。

買い出しが全部終わって遊星が店内で会計を済ましている間、D・ホイールに荷物を積めながら今日の事をふと振り返る。


なんだか遊星とデートしてるみたいで今日は幸せだったなぁ……。


ちょっとだけ恋人気分を味わえたみたいで、つい嬉しくなり頬を緩めて隣に置かれた荷物に手を掛けようとした。
すると、ふいに「かーのじょ!」と背後から呼ぶ声がして後ろを振り向いてみると、見るからにチャラチャラしている男の人が立っていた。



「何ですか?」

「キミ可愛いねー、一人? 良かったら俺とお茶しない?」

「はぁ……、あの私、人を待っていますので……」



と口に出してみたけど、チャラ男は突っ立ったままで諦める様子はない。
むしろ食い下がってきて、「いーじゃん、行こうぜ」とお構いなしに私の腕を掴んできた。
後ろはD・ホイール、前にはチャラ男で逃げられないよう道もふさがれている。
ニヤニヤと下品な笑いを浮かべるチャラ男に背筋がゾッとした瞬間、
急にチャラ男が後ろから誰かに引っ張られるようにのけぞった。
その弾みで私を掴んでいた腕も離れ、バッと顔を上げるとそこには―――。



「遊星っ!」

「……おい、何をしている」

「ゆゆ、遊星って、ああああ、あの不動遊星なのかッ!?」



この街に住んでいるなら名前を知らない人間はいないと言われる遊星の登場に、チャラ男は明らかに動揺し口をパクパクさせていた。
チャラ男を睨む遊星が、いつもの優しい雰囲気とまた違い格好良くて、私の心臓の鼓動は高まるばかりだった。



「で、でも、この子と俺がどうしようがお前には関係ないだろ!?」

「関係あるに決まっている、俺はこの子の彼氏だ」

「えっ、ゆ、遊星?」

「な、何だよ、あの不動遊星の彼女だったのか。分が悪りーぜ!」



チャラ男は遊星の気迫に圧倒されながら、そそくさと逃げるように退散した。
完全にチャラ男が視界から消えたのを遊星が確認すると、私の顔を覗き込むように声を掛けてくれた。



「大丈夫だったか?」

「う、うん。あのっ、遊星、さっきの言葉は……」

「ああ、すまない。ついさっきはお前の彼氏だと言ってしまったが……気を悪くしたか?」

「ううん、そんな事ないよっ! むしろ嬉しかった……」



遊星の顔が近いのもあるのか顔が赤くなっているのを感じつつ、最後の言葉はボソリと小さく声に出したつもりだった。
でも遊星の耳にはハッキリと届いてたようで、遊星は目を丸くさせて私の顔を見た。



「え? それは、つまり……」

「私……遊星と本当の彼氏・彼女になれたら嬉しいな」



その瞬間、嬉しそうに微笑んだ遊星の表情は、この先一生忘れないと強く思った――。



fin.

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