遊戯王夢

□どん底ハッピーデイズ
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学パロ。ほのぼの青春系。





私立ゴッズ学園高等学校に伝わる説話――

それは学園の敷地にある「伝説の桜の樹」と呼ばれる桜の巨木の下で告白して結ばれると、永遠に恋人同士でいられるという恋する生徒にとっては憧れの伝説がある。
ただのよくある胡散臭い話とか思うかもしれないが、実際に結ばれてゴールイン☆してるカップルが多数存在するので、どうやら伝説は本当らしい。

そんな憧れの憧れの伝説の巨木の下に今、私が立っている訳で。
浮かれている私の目の前には―――



「優香、俺は……お前が好きだ。一生離したくねえ!」

「く、クロウくん……え、えええ、えっと……!」



なんと私はずっと思い人であったクロウくんから、告白されているのだ。というか、告白されちゃった……だと……!?
この世がどう引っ繰り返っても有り得ない展開に、当然パニックになって言葉が出ない。
むしろ言葉を出そうにも思うように喋れない。こんなに口が動かないのは初めてで思考も追い付かない。どうしよう。

そうだっ、これは夢よね!? 夢に違いない!
だってクロウくんとはただのクラスメートな私が、クロウくんに告白されるなんて有り得ないもの!
でも……でもっ………!

これが夢なら、目の前のクロウくんに何をしても、何を言っても良いんだよね……?
普段何も喋ってない分、今度こそ……私の気持ちを―――!







「私もっ、ずっと前から好きでしたーーッッ!」



珍しく頬を赤らめて、でも真剣な瞳で私を見据える正面のクロウくんに抱き付く……するつもりが、スカッと空を切る音。
あれ、変だなと、もう一度腕を動かすけどやっぱり空振りで、代わりに視界に入ったのは見慣れた教室の風景。

……あっ、そっか、今は風馬先生の数学の授業で、私は眠くなってちょいと五分だけと居眠りして夢を―――って、夢!?

ようやく現実に戻ると、私は席から立っていて周りからはドッと笑い声が飛び交った。
う、うそっ、ホントに夢だったなんて!!!
クラスメート全員からの視線を浴びながら、私は顔を赤くして慌てて席に座った。
が、さらに追い討ちをかけるように、隣にたたずむ風馬先生から笑顔で一言。



「北村、恋をするのは良いがまず勉強をしっかりな。次寝たら俺の特別補習だぞ」

「は、はい……」



私が身を小さくして返事をすると、また教室中に笑い声が飛び交う。
他の人達が笑うのはこの際どうでも良い。でも、どうか……どうかあの人だけは見てませんように!!
と、祈るような気持ちで一番後ろの席をうかがうと、私と同じく寝てたはずのクロウくんも友達の鬼柳くんと一緒に笑っていた。

まあ、そりゃ笑いますよね。
クラスメートが授業中、唐突に立ち上がって、しかも告白台詞を叫んだら。
もしかして変な奴って思われたかも。いや、最悪な場合は軽蔑されたかもしれない。


あーあ、現実ってそう上手くはいかないもんだなぁ……。
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