遊戯王夢

□子供扱いしないでよっ!
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某様に捧げる相互記念夢。VSクロウ風味。
※作中に一部未成年の飲酒シーンがございますが、
 あくまでフィクションであり未成年の飲酒は法律上禁止されています。






鏡台の前に座った優香は、よしと一つ深呼吸をしてメイク道具を手に取った。

今日はある一大決心の為、知り合いの狭霧やミスティに上等なメイク道具を貸してもらったのだ。
慣れないメイクをしながら鏡に映るボマーの後ろ姿をチラリと見遣る。



(――今日こそ、ボマーさんにキスしてもらうんだから!)



ボマーと優香は一応恋人同士で同棲までしている関係だが、未だにキスすらしていない。
自分が押して押してようやく念願のボマーと付き合えて、さらに同棲するまで関係が進みすごく幸せなのだが、 恋人なんだからキスくらいはしてほしいのが本音だ。

そこで、何故キスをしてくれないのかを考えた結果、どうもボマーは自分を子供扱いしていると悟った優香は友人たちと相談し、お色気作戦を思いついたのだった。

(谷間はないが)胸元が開いた服を選び、普段しないメイクも終わり、自分から女の色気が出ているのを確認した優香はソファに座っているボマーの隣に腰を下ろした。
そして、ボマーの太腿に手を置き、上目遣いで胸元を強調し、静かに口を開いた。



「ねぇ、ボマーさん……、キスして?」

「ん」



出来る限り色っぽい声で誘えた優香は確かな手応えを感じ、瞳を閉じてドキドキしながらボマーからのキスを待つ。
しかし、ボマーから返ってきたのはキスはキスでも……額へのキスだった。



「……って、なんで額なのよぅ! キスって言ったら唇でしょ? くーちーびーるーっ!」

「ハハハ、よしよし。また今度な」



目を細めながらボマーは、隣でキスをせがむ優香の頭を軽く撫でた。
また子供扱いされたと優香は頬を膨らまして、プイっと顔を逸らす。



「……もう! 子供扱いしないでよっ。アタシ、二十歳なんだよ? ボマーさんと同じ大人なの!」

「ああ、分かっているさ。―――おや……、もう仕事に行かないといけない時間だ。行ってくるよ優香。良い子にして待ってるんだぞ」

「え、ボマーさん!? ちょっと……!?」




優香の声も虚しく、ボマーは仕事にへと出掛けてしまった。
一人残された優香は、しばらくポカンとした後、はあと深く溜息をして肩を落とした。



(また子供扱いされちゃったー……せっかくお目かしまでしたのに)



鏡でもう一度自分の格好を見てみると、いつもよりは色気は出ているが、身長が低く顔が幼いためかどう見ても二十歳の女性には見えない。
もう少し自分が年相応の外見をしていればボマーさんも……と優香はいつも思うわけだが、今更考えてもどうしようもないのですぐに諦めている。

だが、今回ばかりは良い案だと思っただけに優香のダメージは大きかった。

あれほど気合を入れたというのに上手くいかなかった悔しさに、プルプルと肩を震わせた優香は何を思ったのかキッと顔を上げアパートを飛び出した。


優香が向かった先は、もちろん――「あの場所」だった。
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