遊戯王夢

□カラスのリンゴは落としにくい
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クロウ×夢主←ブレイブ




「さてと……こんなもんか」



紙袋に入ったリンゴの量を確認しながら、俺は店を後にした。



―――何故このブレイブ様がリンゴなんか抱えているかというと、深い理由がある。

1時間前に遡るが、突如ハラルドが「ネオ童実野リンゴを食してみたい」と言い出したのだ。
ネオ童実野リンゴというのは、ネオ童実野シティのみで栽培されているという名物土産の一つだ。
これが他所から上手いと評判らしく、美食家のハラルドが狙うのも納得がいく。

もちろんこういうハラルドの頼み(ってか我侭か)を聞くのはセバスチャンの仕事だが、運悪く今日に限ってセバスチャンは他方に出張していた。
で、今日ちょうど一人でネオ童実野シティを満喫しようと企んでた俺が抜擢されたという訳だ。


……え? 全然深い理由じゃねぇ?
これでも俺の貴重なオフの時間を使って、わざわざリンゴなんか買ってやったんだぜ!
ハラルドには後でたんまり礼を頂戴するつもりだ。
っても、あいつは金持ちだから痛くも痒くもねぇだろうが……。


同時に、今頃のん気にティータイムを堪能してるだろうハラルドの顔が自然と頭に浮かぶ。
こうなりゃ早く戻ってさっさと渡してしまおう―――と、脳裏に残るハラルドを振り切り、D・ホイールを止めた場所へと向かう。

が、そこには俺のD・ホイールの姿は無かった。



「っかしいな〜……俺ここに止めたはずだよな?」



周辺を何度も見渡しても俺のD・ホイールの姿は見当たらない。


(俺は確かに此処に止めた。だとすれば、こりゃぁスラれたな……)


あんな目立つD・ホイールを盗む馬鹿な野郎がいる事にも驚いたが、簡単に自分のD・ホイールをスラれる俺の方にも抜かりがあっただろう。
とっとと犯人捕まえて取り戻さねぇと、トリックスター失格かもしれねえ。

とりあえずハラルドやドラガンのD・ホイールには、俺のD・ホイールの追跡機能が付いてるはずだ。
まずはハラルド――は説教くらいそうだから、ドラガンに連絡して事情を説明しねえと。
ったく、これも全部ハラルドがリンゴなんか俺に頼むからだろ!
やっぱり引き受けずにハラルドに行かせりゃ良かった……何してんだ俺。


今にも握り潰したいリンゴの袋を片手で抱え、ポケットの携帯を取り出そうとしたその時だった。



―――ドンッ!




「きゃっ!」

「うおっと」



いきなり俺の前に女の子が飛び出して来て勢いよく俺にぶつかると、その反動で袋が落ちてリンゴが辺りに散らばった。
俺はリンゴなど目もくれず、地面に倒れ込んだ女の子の元へ咄嗟にしゃがんで声を掛けた。
あんな勢いだったから、ケガとか無けりゃ良いが……。



「大丈夫か? あんた」

「いたた……う、うん、大丈夫。ごめんなさい、急にぶつかって」



そう言って顔を上げた女の子は、可愛らしい顔立ちをしていてセミロングの栗色の髪が印象的だった。
俺の周りにはいないタイプだなと思いつつ、手を差し伸ばし女の子を立たせる。
普通に立てたところから、どうやらケガは無いようでホッと胸を撫で下ろす。
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