遊戯王夢

□「恋」という苦悩
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紫苑様に捧げる相互記念夢
 ヒロインに恋しちゃったクロウさんの心境





「恋」―――そんな洒落たものは、今の自分には無縁だと思っていた。
そもそも雑誌とかテレビの女やカーリーがよく口にしている、人に「恋」をするという気持ち自体がよく分らない。
昔から子供達の世話や盗みを働いていたりして、とにかくサテライトにいた頃は食べるだけでも必死だった為、「恋」どころではなかったのもある。
それに、女に興味を示す暇があったら、WRPGに出場するための資金稼ぎの時間に当てるのが今は優先だろう。


「恋」やら「愛」やらは、優勝してからゆっくり考えていけばいい。


―――と、クロウは考えていたが、次第にその頑固な考えも揺らいでいくのだった。






「私よ、入ってもいいかしら?」



控え目にガレージの扉を少し開けて、顔だけひょっこり現したのは十六夜アキだ。
いつもは何も言わずにズカズカとガレージの中に入るのに、今日は一言断るなど妙に珍しい。
いちばん扉の近くにいたクロウが、配達の段ボールを整理するのを止めて遊星達に代わって答えた。



「別に構わねえぜ。……ってか、今さら一言断らなくても、いつも勝手に入って来てんじゃねえか」

「今日は優香も一緒に来ているから聞いてるの。前に言ってたでしょ、今度連れて来るって」

「先日から話しているデュエルの腕前が良くて、D・ホイールも少々弄っているとかいうお前の友人の事か?」



奥のソファに座りコーヒーをすすりながらジャックが口を挟んだ。
堂々と昼間からくつろいでいるジャックの姿にクロウは横目で睨み、「てめえは良いから早く仕事を見つけろ」と怒鳴ってやりたくなったが、
アキの友人が来ているという前では流石にグッと拳を握って堪える。


――そのアキの友人である優香の事は、クロウも前から飽きるほど聞かされていた。
何でもデュエルアカデミアでクラスが一緒で話している内に意気投合したらしく、今ではいつも二人で仲良くしているらしい。
顔は知らないが、アキの話を聞く限りでは悪い奴ではないと覗(うかが)える。
デュエルもアキと並ぶほどの実力を持っているらしいので、クロウや他の3人も一度は会ってみたいとは思っていたところだった。


ジャックの問いにアキが答えようとすると、たった今D・ホイールの調整の終わったらしい遊星とブルーノがアキとクロウの傍へと近付いてきたため、
自然と三人の視線は遊星とブルーノに向けられた。



「その子、D・ホイールも弄れるんだよね。僕も気になってたんだよ」

「で、アキ。その子というのは……」

「ええ、紹介するわ。優香、入って来て」



扉を大きく開けアキが声を掛けると、おずおずしながら優香が姿を現わす。
デュエルアカデミアの帰りであろうアキ同様制服を着ており、緊張しているのか顔は俯いている。
何か言おうとはしているが、口ごもるのを繰り返す優香の様子を見て、アキは隣で苦笑を浮かべ優香の背中を優しく押して耳元で呟く。



「優香、そんなに緊張しなくていいのよ。この四人は悪い人じゃないから」

「えっ、あ、うん……」



アキに言われ、少し安堵したのか優香はようやく顔を上げクロウ達の方へと目線を変える。
はっきりと露になった優香の顔は、透き通るような白い肌に、艶のある黒髪は肩まで伸ばしてあり、薄茶色の大きな瞳が印象的で、
顔立ちも整っているが美人というよりは可愛い系といっていいだろう。
恥ずかしそうに頬を少しピンクに染めているのが、白い肌によく目立つ。


今までクロウが触れ合った女性の中で、まるで違う雰囲気を持った優香に思わずクロウは目が奪われそうになっていた。



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