ワールドブレイク

□ワールドブレイク 4
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「べ、別にあんたの教えなんか必要ないわ。私ひとりでもこんなゲームくらい、すぐに―――」

『へえ、俺の助けがいらないってか? どうせ優香のことだから、ネットでカードのことを調べてんだろ。カードの膨大さに対してたった四十枚のカードでデッキを作るなんて難しいとか思ってんじゃねぇか?』

「………うっ、そ、それは……」



悔しいが鬼柳の言ったことは全て図星で、私は言葉に詰まってしまった。
ネットで調べている事もデッキを作るのは難しいと感じていた事も確かだ。
この男、本当に私のことを何でも知っているんじゃないかと、ほんの一瞬だけ思ってしまう。
画面に映る鬼柳の視線が、モニター画面越しだというのに私にジッと向けられている気さえした。



『言葉が詰まるってことは、図星みてえだな』

「…………悔しいけど、あんなにカードの枚数が多いなんて思ってなかったわ。四千枚以上だなんて多すぎでしょ」

『それだけデュエルモンスターズっていうゲームは奥が深いってことだ。本当だったらそのデュエルモンスターズの楽しさをじっくり教えてやりたいんだが、猶予は三日しかねえんだよな』



そう言って、鬼柳は困ったように腕を組んだ。
いや元々三日と言いだした張本人はアンタだから、と突っ込もうとしたけど、「そこでだ!」と鬼柳が声を上げたのでビクリと肩を震わせてしまった。



「い、いきなり何!? ビックリしたじゃない!」

『なーんて、俺が何も準備なしに此処まで来ると思ったか? 優香にはデュエルに慣れてもらうために、特別に俺が作ったこの特製ストラクチャーデッキを使ってもらうぜ!』

「ストラクチャーデッキ? って、確か最初から構成されてるデッキよね? 公式HPでいくつか種類があるのを見たような」

『そうだ、満足したデッキを作るのは初心者には難しいし時間が掛かる。仮にすぐ作れたとしても、あのジャックの強力なデッキには勝てない。だが、俺が組んだこの特製デッキならジャックに勝てるんだよ』



私のような初心者でも、ジャックに勝てるデッキ!?

思わず、目を見開いて驚いた。
鬼柳がポケットから出したあのカードの束、じゃなかったデッキを使えば、私は負け犬呼ばわりされずに済むってこと……!?
鬼柳の手は絶対借りないと思っていたけど、その特製デッキを見た瞬間、気持ちが揺らいだ。

―――初心者の私ひとりで構成するより、素直に鬼柳の構成した特製デッキを使った方が恐らく勝つ可能性は高い……。
鬼柳の手を借りるのは不本意だけど、私がデッキを構成するよりはマシだろう。

特製デッキにごくりと喉を鳴らし、私は口を開く。



「本当に……勝てるの?」

『それには完璧にこのデッキを使いこなさなきゃならねえが……なに、優香なら三日もありゃ余裕だ』

「じゃあ、どうやったら使いこなせるの?」

『んじゃ、ここ開けてくれよ』



鬼柳が、ドンドンと玄関の戸を叩く。
余談だが、私は一度もこの家に男を上がらせたことはない。
ましてや女にすぐ手を付けるという噂がある鬼柳を入れるなんて、いくら私のプライドに懸かっているとはいえ―――正直それだけは遠慮したい……っ!
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