ワールドブレイク
□ワールドブレイク 4
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「い、嫌よっ。あんたを家に上がらせるなんて、ぜーったい嫌!」
『ま、そう言うとは思っていたぜ。じゃ、昨日いたカードショップでデュエル出来るスペースでどうだ? そこなら良いだろ?』
昨日いたカードショップのスペース――というと、確かジャック達が座っていたテーブルやイスがあった所だろう。
下手に家に入れて何かされるよりは絶対マシだし、ジャックに勝つ為にはどの道、鬼柳の力を借りなければならない。
簡単に鬼柳が引き下がったのが少し気になったが、私は渋々と承諾した。
そして通話ボタンとPCの電源を切ると、適当にカバンを手に取った。
一応鏡も見たけど、服装も特に可笑しくは無いだろう。
まあ折角だし、もうちょっと良い服を着た方がいいかな……
って、別にデートでも何でも無いんだから、このままで良いはずじゃない!
何故か胸がモヤモヤとする気持ちを抑え、ズカズカと玄関まで歩くとカギを開けて、慎重にドアを開けた。
すると目の前には、先ほどまでモニター越しで会話していた鬼柳の姿があった。
しかし、よく見れば頭のダサいバンダナ以外は結構センスの良いファッションをしていて、今風のお洒落な高校生といった感じが出ている。
てっきり、シャツインで茶色のジャケットとか着ているかと思っていたのに意外だった。
……あくまで頭のバンダナを除いての話だけどね。
勝手に私に脳内でファッションチェックをされている事に勿論気付いてない鬼柳は、「よ」と軽く手を上げて私に声を掛けた。
「ようやく開けてくれたな、ってか、私服だとスカート短いじゃねえか。優香って綺麗な脚してんのに勿体ねえ」
「なっ!?」
ま、また、この男は会うや否やスカートの話題を……!
制服のスカートよりは丈が短いのは確かなんだけど。
綺麗な脚とか言うのも、おそらく私を油断させるための嘘に決まっている。
鬼柳なら他の女にも、同じ事を平気で言ってそうだし。
うん、絶対に口にするはずだ。絶対に―――
「言っておくけど、私はジャックに勝てるっていうその特製デッキとかいう使い方をあんたに聞くだけだからね! じゃなかったら、誰があんたとなんか出掛け―――」
「あれ、もしかしてちょっと照れてる? ちなみに俺は女に綺麗な脚だなんて言うのは初めてなんだけどな」
「はあ!? そ、そんなワケないでしょ! それより早くカードショップに行くんでしょ!? 変な教え方したら承知しないんだからねッ!」
そうキツく言い放つと、私は玄関の鍵を閉めて、目の前の鬼柳を押してカードショップへとズンズンと足音を立てながら歩いて行った。
今、顔が熱く感じるのは、きっと外の暑さにやられたに違いない。
鬼柳なんかに照れてるなんて、まず有り得るはずもなかった。
大体、初めてだなんて、いつも他の女にだって言ってるんでしょ……っ!
何度も自分に言い聞かせてはみたが、顔の熱だけはしばらく下がる気配はなかった。
その私の後ろからはクックッと笑い声が聞こえたけど、
こんな顔を見られるワケにもいかないので聞こえないフリをし私は歩く速度を上げたのだった―――。
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2010.02.01