遊戯王夢
□シンデレラ・ガール!
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それから数日後。
庭の掃除をしていた優香は、いつものように郵便受けを覗くと、一通の手紙が入っていました。
何気なくその手紙を手に取ると宛先は優香宛となっていました。
自分宛の手紙など珍しく、わくわくしながら優香は封をしてあったシールを丁寧に剥がし、中の手紙を声に出して読み始めました。
「えーっと……『今晩六時より王宮にてダンスパーティーを開催いたします。このパーティでは王子さまが」
「優香、ちょっと貸せっ!」
優香が読んでいる途中でしたが、嫌な予感がしたアンドレは優香から手紙を取り上げました。
そしてジャンとブレオも隣から覗きながら、慎重に手紙の内容を確認すると、王子が生涯のパートナーを選ぶためにダンスパーティーを開催する――という三人からすればとんでもないパーティーへの案内状だったのです。
もし、大事な娘(or妹)をダンスパーティーなどに出席させれば、きっと王子はその可憐さに一目惚れし結婚を申し込むに違いありません。
そう考えた三人は、優香がダンスパーティーに行くことを断固反対し始めました。
「優香、ダンスパーティーには行くな」
「ええっ!? そ、そんな、王宮なんて滅多に入れないし、私だって行きたいもん! ねえ、アンドレとブレオもなんとか言っ――」
「絶対駄目だ! 王宮だからこそ、こういうトコロは危ないっ!」
「アンドレの言う通りだぜ。王宮じゃ無理だが、ダンスパーティーなら屋敷で開催してやるからさ」
な?、とブレオが優しく口調で優香の頭を撫でましたが、優香はその手を払いのけ、
「ジャン達のばかっ!」
と言い放ち、屋敷の中へ走り去ってしまいました。
優香にここまで拒絶されたのは初めてだったジャン達は、ショックでその場からしばらく動けませんでした―――。
部屋に戻った優香は、水槽の中で飼っているカニの「ユウセイ」の前に座っていました。
ユウセイは、全体的に真っ黒で黄色の線が入っている珍しいカニでもあり、優香にとって唯一自分の気持ちを分かってくれる友達でもありました。
「ユウセイ、今晩王宮でパーティーがあるそうなの。私にも案内状が来たんだけど、ジャン達は行ったら駄目だって……。まぁ勝手に行こうにも一人でお城なんか行けるわけないし、もう諦めるしかないよね……」
そう言った途端、優香の瞳から一滴の涙が頬を伝い落ちます。
ユウセイが一所懸命に水槽の中で何かを伝えようと動き始めますが、優香はきっと自分を慰めてくれていると思い、「ありがとう」と言おうとした瞬間、優香の背後から何者かの声が聞こえました。
「―――あなた、ダンスパーティーに行きたいのね」