遊戯王夢

□シンデレラ・ガール!
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一方その頃、王宮では―――。



「はああっ!? け、けけけ、結婚ー!? お、俺が!?」



突然の話に王子さまことクロウは目を見開いて、話を切り出してきた従者こと鬼柳の顔を見ました。
ちなみに鬼柳は王宮の立場ではただの従者ですが、クロウとは幼馴染でタメ口な仲であったりします。



「当たり前だろ。そろそろ後継ぎも欲しいところだしな」

「だから何で俺なんだよ!? 結婚だったらブルーノがすりゃ良いだろ!」



と、クロウはこの国の王様でもあり兄のブルーノを指差します。
しかし、自分の隣に座っていたはずのブルーノはいつのまにかD・ホイールのメンテナンスをしており、クロウの言ったことはおろか話さえ全く聞いていない様子でした。



「良い子ちゃんね〜、次はどこの部分を弄ってほしい? エンジンかな? それともホイール? あっ、あと此処のパーツも―――」

「…………」



これがこの国を統べる王の姿かよ……と、クロウは言葉を失ってしまいました。
確かに王がこんな様子では、結婚は当分出来そうにもありません。
ですが、いきなり結婚話を持ち出されたクロウもすぐに納得する訳にもいきませんでした。



「とにかくクロウ。お前はさっさと結婚しろって」

「ふざけんな! 大体俺は女なんて興味ねぇよ。デュエル習ってる方が良いって」

「同感だ。女などにうつつを抜かす暇があったらデュエルをするべきだろう」



クロウの言葉に、二人の話を聞いていた衛兵であり、鬼柳と同じくクロウとは幼馴染のジャックも頷きました。
どうやら二人は相当なデュエル馬鹿のようです。



「バカか、お前らっ! 後継ぎがいねぇと他の奴らに王宮を取られるんだぞ!」

「うっ、流石にそりゃ困る……っても、俺は結婚なんてする気なんてまだ微塵も」

「じゃ、試しにダンスパーティーでも開くか」



あまりに唐突に鬼柳が言ったものですから、クロウとジャックは「はあ?」と同時に首を傾げました。
結婚とパーティーがどう関係があるのか、二人にはさっぱり分かりませんでした。



「だから国中の娘を集めてダンスパーティーを開くんだよ。そうすりゃ、お前の目に止まる娘の一人や二人はいるはずだ。よし、そうと決まったら早速招待状を書かねぇとっ!」

「お、おい、勝手に決めんなって! つか、国中の娘を集めるとかてめぇが満足したいだけだろーが!」

「んじゃ、後のことはこの俺に任せとけ!」



鬼柳はクロウの言うことに全く耳を傾けることなく、招待状を書くために音速ともいえる超スピードでその場を去っていきました。
相変わらず逃げ足の早い鬼柳に、クロウは茫然と立ち尽くしていました。
憐れに思ったジャックはクロウの肩に手をポンと置き、ブルーノはというとそんな弟の様子に目もくれず愛機の整備に夢中になったままでした――。
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