遊戯王夢
□ずっと傍で、支えたい
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一人、ボロボロに踏み潰された書類と共にその場に残された私は、地面にぶつけられ痛む額を手で抑えながら、ゆっくりと起きあがった。
片手で書類を拾い集めながら、さっきのファンの女の人が吐いた台詞をふと思い返す。
――ったく、こんな化粧もしてないようなダサい女があのユニコーンの皆様のサポーターなんて有り得ないわよ
確かに私は化粧もしていなければ、綺麗になる努力すらしていない。
髪だって切りにいく暇もないので普段からボサボサだし、服も一日中ジャージの時が多い。
一方のファンの人達は、皆綺麗になる努力をしているようで容姿端麗な人ばかりだ。
そんな俗で言うダサい部類に入る私がユニコーンの皆さんの近くにいる事は相応しくないと、ファンの人達からすれば思うのだろう。
イジメを受ける理由の大きな一つかもしれない。
でも、私はめげなかった。
これからどんなイジメを受けたってユニコーンのサポーターを辞めるつもりは一切ないし、
それにファンの人達が裏でこんな陰湿なことをしていると知ったら、ユニコーンの皆さんは悲しんでしまう。
私一人が我慢しておけば、いつかはファンの人達だって分かってくれる日が来るかもしれない。
だから、それまでユニコーンの皆さんにバレないようジッと耐え続けないと――。
そう改めて強く決意し、のろりと立ち上がるとサポータールームへと歩き出すのだった。
++
――数日後。
「はあ、また残業してたら遅くなったな〜」
家までの帰り道、うす暗い歩道を一人で歩きながらポツリと呟いた。
あの一件からファンの女の人達からのイジメはなく、額の傷も幸い軽いものだったのですっかり癒えていた。
ユニコーンの皆さんには相変わらず送ってやると言われたけど、こんな夜遅くまで待たせる訳にもいかないし、サポーターが選手にサポートされるなんてもってのほかだ。
自分の事くらいは、きちんと自分で管理しないといけない。
今日はもう疲れたし、さっさと帰って寝よう――と歩く速度を早めた瞬間、いきなり何者かに後ろから抱きつかれた。
(い、嫌ッ――!? ち、痴漢!?)
背後にいるのは身体つきから男のようで、あまりの恐怖に咄嗟に大声を出すことも振り返ることも出来ずにいると、口をガムテープで塞がれ、さらに手首を縛られてしまった。
これでは声を出して助けを呼ぶことができない。
男は近くに止めてあった大型D・ホイールの荷台に私を強引に乗せ、その状態のまま走り出したのだった。
恐怖と不安で頭はパニック寸前で、最早逃げ出すことすら考えることが出来ず、私はジッと目を瞑り、これが夢であってほしいと願うしかなかった――。