遊戯王夢

□鈍感レベルMAX
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「奴ら、お前のこと可愛いってな……ラモンの姪だから今は手を出してないだけだろうが」

「ふーん……もしかして、鬼柳さんもそう思ってるの?」



興味津々な素振りで優香は身を乗り出して鬼柳に訊いた。
急に話題が自分へと向けられ、自分の気持ちを見透かれたのかと鬼柳は一瞬焦ったが、キラキラと見つめて答えを待つ優香を見て、どうやら興味本位で聞いているようであった。
鬼柳は心の中で胸を撫で下ろすと、優香が先程持ってきたお茶を手に取る。



「子供がそんな大人びた口をきいてんじゃねえよ」

「むっ、私だってもう子供じゃないもんね! 胸だって大きくなってきたし……なんなら鬼柳さん触ってみる?」



突然の優香の言葉に、お茶を口に含んでいた鬼柳は思わず吹き出そうになってしまった。
寸前になんとか飲み込んだおかげで自分のキャラは守れたが、それだけ優香の口にした台詞には破壊力があったのだ。
優香のことだから特に深い意味はないだろうが、恋人でもない男に「胸を触ってみる?」など尋常では有り得ない状況である。

しかも、肝心の優香はギリギリBカップの胸に目線をやりながら、鬼柳の近くにじりじりと詰め寄って来ている。
流石の鬼柳も、男の本能か胸の方に目がいきそうになるが、ハッとしてすぐに目線を逸らす。



「優香……他の奴らにも、んな事言ってるのか?」

「ふえ? そんなこと言ってないに決まってるじゃん。鬼柳さんにだけだよ」



へらっと笑って答えた優香に、目線を逸らしたまま鬼柳は頭を抱えて深く溜息をついた。
同時に、強く確信したことがある。


(コイツ……やはり意味を分かってないんだろうな……)


まだ自分にだけらしいが、今のような台詞を他の男に言えば散々な目に合うことは間違いない。
今の優香の様子では、高い確率であり得ることだろう。
もう少し危機感を持たせた方が良いのかと鬼柳は口を開くが、優香の方が先に声を発した。



「そういえば、鬼柳さんはデュエル教えてくれるの? なんか話が逸れちゃったけど」

「……他の男に優香を任すより、俺が教えた方が優香のためだろ。まあ、デュエルタイムで敗北しない限りまでなら俺は」

「えっ、つまり良いってことだよね!? ありがと、鬼柳さんっ!」



鬼柳の話は終わっていないのにも関わらず、大喜びで優香は鬼柳に抱き着いた。
不意をついた衝撃で優香を受け止めることができず、鬼柳はその場に崩れてしまう。
自分の上に覆い被さって喜ぶ優香を見て鬼柳はチャンスだと思い、くいっと優香の顎を掴むと自分の方へと向かせた。
優香は何が分からないと言いたげな顔で、目をぱちくりとさせる。
お互い顔が近いことと、鬼柳のいつもと違う眼差しに流石の優香も少し顔を赤くさせていた。



「き、鬼柳さん、どうしたの?」

「優香、もう少し男には気をつけた方がいい……例え俺でも、だ」

「へ? 気をつけるって?」

「……これだけ言っても分からねえのかよ。なら仕方ないな」



小さく溜息をつくと、鬼柳はゆっくりと顔を優香へと近付けていく。
あと残りわずか四センチ足らずで優香の唇が重なりそうになった時―――

この世の者とは思えないドス黒い声が聞こえたのだった。


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