遊戯王夢

□ときめきキューピット
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それからの帰り道、ブラックバードに乗せてもらい、しっかりとクロウにしがみ付いていた優香は、前で運転するクロウの表情をこっそり窺った。
だが、ヘルメットをしているためクロウの表情は窺えない。

ボマーと別れてからクロウとは一言も喋っていない。


(もしかしてボマーさんとの別れがショックだったとか……?)



行き道はいろんな事を喋って来ただけに、急に黙り込んでしまったクロウが流石に心配になる。
優香は何か話しかけようと話題を模索していると、急にD・ホイールが止まった。
もうガレージに着いたのかと思い、ヘルメットを取り優香は辺りを見渡したが、そこは見慣れない景色。
代わりに目の前には青い海が広がっていた。



「クロウ、ここは……?」

「へへっ、たまにはこういう所もいいだろ?ほら、早く行こうぜ!」



クロウがさっさと行くぞとばかりに促すと、優香の手を取って、海へと駆け出した。
先程の沈んだ様子とは打って変わって、はしゃぐクロウに優香は戸惑いながらも笑みを零してクロウの手を握り返した。

波打ち際からは少し離れた砂浜に二人は腰を下ろすと、優香は目の前の海を眺めた。
波の音と、遠くからの小さなはしゃぎ声がいくつか聞こえる。
優香はしばらく周囲の音に耳を澄ませていると、クロウが不意に口を開いた。



「……なあ、告白って誰にするんだ?」



思いもよらない質問に優香はドキリと心臓が唸った。

(やっぱり聞かれてた……!)

ひどく動揺した優香は、まさか「クロウだよ」と言う事など出来ず、声を出せずに黙りこんでしまった。
その様子を見たクロウは、優香が動揺している事にすぐに気付き、言葉を続ける。



「俺に言えねえ相手なのか? まさか遊星とかジャックとかじゃ無えよな!?」



クロウは優香の方へ顔を向き、真剣な眼差しで問う。
返答に困った優香は、このまま思い切って告白しようと思ったが、やはりクロウがどう思っているのか考えると怖くて聞くことができない。
黙って何も答えない優香に、痺れを切らせたクロウは、強引に優香を自分の胸の中へと引き寄せた。



「く、クロウ?」

「……俺は優香の事が好きだ。他の奴が好きだとしても誰にも渡さねえ」



切ない表情で優香の耳元で囁くクロウの言葉に、優香は耳を疑った。


(クロウも私の事が好き……?)


優香は夢かと一瞬疑ったが、自分を力いっぱい抱き締めるクロウの腕が現実だと実感させた。
ドキドキと高鳴る心臓がクロウに聞こえそうで余計にドキドキしてしまう。
優香はそれを悟られないよう、そっとクロウの背に腕を回した。



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