男塾夢

□回りだした恋ごころ
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+おまけ+


「よう影慶、この前は樹里とデートで楽しかったか?」

「……卍丸」


 天動宮の廊下を影慶が進んでいると、窓際に佇んでいた卍丸に呼び止められた。


「あれは邪鬼様から仰せつかった重要な任務。野暮な詮索をするではない」


 くだらんと言いたげな表情で、影慶は進む足を止めず卍丸の前を通りすぎようとする。


「へっ、よく言ったもんだぜ。デートの相手に一号の坊主どもを候補に外したのもお前だろう」

「何だと……?」


 卍丸の一言に、影慶はピタリと足を止め、鋭いまなざしを向けて睨む。


「邪鬼様の扉の前にいた三号生から聞いたんだよ。邪鬼様が雑用だから一号生にさせろ、って話だったのに『初めての試みだから、まずは自分を同行者にさせてくれ』なんて無理やり懇願したんだろ?」


 いつものマスクを外しているせいか、卍丸はいっそうニヤニヤした笑みのまま影慶に問い掛ける。
 
 
「……たしかに懇願したのは事実だが、俺は責任者として当然のことを」

「フッ、どうだかな。散々樹里をからかって『かわいらしい』とか浮いたセリフを吐くのは、責任者のする事じゃねぇよ」

「なっ……貴様、見ていたのか!?」


 樹里と自分しか知らないはずの出来事を話す卍丸に、影慶は掴みかかりそうになるが、
 予期していた卍丸はひらりと空中に身体を浮かせ、ご自慢の体術で影慶との距離を取る。


「あんな男塾の近くでイチャついてる方が悪い。センクウたちや一号どもに知られたくなったら、いい加減告ったらどうだ。モタモタしてたら一号の坊主どもに盗られるぞ」

「貴様……」


 図星といった表情を見せる影慶に、卍丸は「世話のやける野郎だな」と小さくつぶやいて、廊下を後にした。
 この挑発で影慶が告白したかどうかは、また別の話である――。


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